Eno.110からのお手紙

すとらはクリスマスの夜に生まれた妖精です。
Strawberryから四つだけもらって、すとらという名前になりました。

すとらにとってまず大事なことは、自分の名前と、いちごのことでした。
だから、すとらは最初にそれだけを言うことが出来ました。
すとらはクリスマスのしあわせを見守るための妖精です。自分という存在が示せるなら、他はいらなかったのです。

でも、きっと役割としては、ちょっとおねぼうさんでした。
もうクリスマスケーキのいちごはすっかり食べ終わった後ですから。
じゃあ、すとらはどうしよう?来年のクリスマスまで、眠っていましょうか。

……どうしてか、まだケーキの香りがします。
どこから?どこだろう。すとらはふわふわ、すてきな風に乗ってパーティの方へ。
そうしてすとらは、ここまでやってきたのです。

すとらはだれかと話すための力を持っていませんでした。
すとらにあったのは、ケーキのいちごが最後まで大事に残されるように、そしておいしく食べてもらえるように願う心だけでした。
願う心はひとに寄り添うもの、ですから、だれかがすとらとおはなししてくれるのは、すとらにとってうれしいことでした。

でも、伝えるすべは人一倍に少なくて。

色んなものをもらいました。色んなものを分け合いました。
色んなひとがすとらに触れてくれました。撫でてくれました。ことばを、心をくれました。

すとらは、お返しをしたくて。ショートケーキを作って。甘いものを作って。
色んなひとにあげました。色んなひとが、「ありがとう」と言ってくれました。

すとらは。自分も、それがほしいと思いました。

もちろん。それをことばにできなくても、受け取ってくれました。
伝えることは出来ました。でも。
ちゃんと言えるなら、どんなにすてきだろうって、思ったのです。

もし言えるようになったら。
伝えたいひとが、いっぱいいるな。一回じゃ、ぜんぜん、足りないのです。

すとらは、そうして思い返すいっぱいのことが、いちばんしあわせだと思いました。
それは見守るものではなくて。すとらの、すとらだけの、しあわせなのでした。