Eno.29からのお手紙

はりこ さま


ええ。見たこともないですし、仲間の尻尾も同じように聞くだけです。
あなたに見せることはできませんが、妖精の尻尾なんてそんなものなのでしょう。
悪戯がばれて、"尻尾を捕まれ"でもしたら。もしその時があったのなら、見えるのかも。
私にとっては、これ以上ない恥になってしまいますが!

大きくて、ふかふかの尻尾だったらいいですね。
いつでも寄りかかって椅子にできればちょうどいいです…… なんて、ものぐさですかね?
それでも、尻尾を椅子にして地面に寄りかかるというのは、私の夢でもあります。
本の中の出来事なのかもしれませんが、きっとふわふわふかふかで心地よいと考えてしまいます。


ええ。焼いたものはケーキと……それから、お肉も少々。
はりこさまが前言っていたハンバーガーを作ってみたくて。でも、中々難しい物でした。
すぐ生焼けになってしまいますし、何より加減が。
なんだかこの文章は前も書いたような気がしますが、何度でも書けてしまいますね。
実物は、人にお出しできるようなものではありませんが。少しだけ、思い出を便箋に染み込ませておきます。

さて、そろそろこの祝い事もお開きの時間が近づいてきているみたいです。
私、こんな文通をさせていただくなんて思っておりませんでしたので、少し名残惜しい気もしますね。
あなたは私を手紙を交わして、楽しかったですか?
私は、とても楽しかったですから。あなたも楽しかったのなら、召使い冥利に尽きるというものです。


白くて小さな妖精 より





(手紙に鼻を近づけてみれば、ふんわりといちごの匂いがするでしょう。)
(妖精が書いていた『思い出』とは、このことを指しているようでした。)