Eno.29からのお手紙

はりこ さま


あら、なんだか便箋を二枚重ねてしまいましたか?
悪戯ということにしておいてくださいませね。


私にとって、召使いであることは本懐です。そう書いてくださるのは光栄です。
普段から努めておくのは、悪戯をするための布石にもなりえます。
なんといったって、きちんと普段からこなしていれば悪戯をしてもそうそう疑われませんからね。

妖精からの悪戯のコツとしては、そのうえで『人々が怪我をしない、ささやかな悪戯』を選ぶことです。
大抵、そのような大掛かりな悪戯はみな犯人捜しに躍起になります。……そうなると、いささか不利です。


さて、私の好きな花といえば……レースフラワー、という花を知っておりますか?
花瓶や花束によく一緒に添えておく、白くて小さなお花です。
小さくとも、周りの花を引き立てる素敵な花です。
私たち妖精は花の蜜を飲んだりもしますから、たまにもらったりします。
ミソ……はよくわからないですけれど、お酒はたまに飲む分には私も好きですね。

私は庭師ではないので、切り花以外はあまり見る機会がありません。
春の花といえば、外にはどんな形のものがあるのでしょう。
やはり、野に咲くものの方が蜜も香り高いのでしょうか?
妖精を食べないのなら、私も安心して紹介も聞けます。


お屋敷の召使いより