RECORD

Eno.1001 ケイファーの記録

私闘:220



訓練場でモルドと名乗った闘士に話しかけられた。
曰く、獣害から作物を守る仕事をしているらしい。
顔色も悪いし雰囲気は頼りなさげだったが、
ここでそういう偏見で見ると痛い目を見るというのは知っている。

話を聞いてみると、過去にもこの闘技場で闘っていたらしい。
が、「ひと相手に武器を振るのに緊張がある」などと抜かす。
妙なやつだった。試合に付き合った俺も俺か。

だが、やはり偏見は偏見だ。
こいつにはちゃんと実力がある。



飛び掛かる一撃が痛い戦型だ。
それを素直に終盤に使うのは当然頭に入れていた。
相手も俺の読みをそう思うだろうと思って、初撃で迎え撃とうとしていた。
逆張りだ。
結果は普通に俺が空回りしてただけだった。
痛かった。



話を戻す。

傷が治る場所でひとと闘う感覚を取り戻そうとしていたらしかった。
その意味を考えるのに、そこそこの時間がかかった。

それでも、闘おうとしている。
美味いものを食おうと言ってくる。
武器を交える相手をひととして扱う。

ここではそれが当たり前だ。
俺もそうあるべきだと思う。
ここで生存していくんだから。

後から思えば。
こんなやつが暮らしていける国は。
悪いところではないだろうなと、少し羨ましくもあった。