RECORD

Eno.309 ピトルーシカの記録

はじまりはじまり

血溜まりの中に、少女は横たわっていた。
肌の表面が触れる液体の冷たさに、自分はもう長くないことを悟る。
ふと、靄のかかった視界に黒い影が落ちた。

「やあ、お嬢さん」

声をかけられて気づく。ああ、誰かが自分の顔を覗き込んでいるのか。

──わたくし、死ぬの。

言葉が半ばひとりでに口をついて出る。

「このまま放っておけばね。でも、我々と一緒に来るなら話は別だ」

当然か。彼の口ぶりからも明らかだ。
けれど、続いたのは思いがけない提案だ。

──どういうこと。

彼は笑いを含んだ調子で答えた。

「君、新しい仕事に興味はないかい?」