RECORD

Eno.57 ラト族のキャロの記録

盾と書いて

これは過去の話。でも記憶は鮮明に残っている。
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フォルテの転移魔法によるゼイルの失踪から数日経った。
フォルテは何もしていない。
転移魔法の実験をゼイルに依頼しただけだ。
転移する場所は協会の入り口だったと聞いている。

それなのにフォルテの転移魔法陣は『失敗』したんだ。
確かに失敗は付きものだがこういう事は夢ではなかったんだと感じた。


周りに励まされても食欲がイマイチなかった。
ウサギの時はけっこう食べるんだけどな。
人間は一日三食しか食わないので便利だな~と思っている。

「たーべちゃーうよー」



この頃、シルトに食事の一部を取られる。
ゼイルの失踪がオレうさぎに食われた牧草みたいに擦り減っていた。

「キャロ、近頃元気ないね。ウサギの姿にも戻らなくなっちゃったし…」


「…んだな」


頷いた。確かにゼイルがいなくなってからずっとウサギに戻ってない。
そういえば恋人であるイデアは気にしてないな。アイツの方が心配しているだろうに。
なーんでこんな弱くなってしまったんだろう。

「ね、今度リンゴでも一緒に食べない?美味しいリンゴが売ってるお店があるんだ~」



いつの間にそんな知識をもっていたなんてなー。

「分かった。一緒に行こう」


リンゴとあればオーケーと言わないワケがないからな。

「やった!あ、盗みはダメだからね??」


オレは盗賊寄りではある。いくら技術があっても、そんなことしたら自警団に突き出されて終わりだ。
罪を重ねてもマイナスになるだけだ。

「それはしない、しない。ちゃんと買って食べようぜ」


「うん!お金は用意しておくね。じゃあ日時は―――」


シルトはそう言いながらメモを書いた。昔からの時間の約束事にはメモをしている。

「じゃあこの日でこの時間、ね!ダメだったらその時はまた別の機会かな」



こうしてリンゴを買ってどこかで食べるだけの約束が交わされた。

その時はどうしてこんな約束をしたのか考えてもいなかったが、
今思えばシルトは元気づけたかったんだろう。

シルト、ありがとな。