RECORD
思い出せること

「街の見回り?」

「ああ、今日はハロウィーンの行事があり、
多くの子ども達が集まるからな」

「私服警官として、
俺も見回りに参加する運びとなった」

「へえ、お祭り日和の中ご苦労様だね〜」

「……」

「その格好で街回るの?」

「む、そのつもりだが」

「……」

「私服?」

「? 何か問題でもあったか」

「え、いや、あの……
それ……スーツだよね。かなり……ちゃんとしたやつの」

「確かに兄さんいつも着てるけどさ……
地味ハロウィンじゃないんだし、
もうちょいラフな格好しなよ」

「ラフな…………」

「……」

「……」

「……ラフな……」

「そこで悩む〜〜?
……あ〜、じゃあちょっと待ってて、兄さん」

「ふむ?」

「じゃ〜ん、簡単雰囲気仮装セット〜」

「簡単雰囲気仮装セット」

「そ、知り合いの子になんか貰ったやつ。
可愛くてつい買いすぎちゃったからお裾分けっす〜!って感じでさ」

「これ付けてればスーツでうろつくお堅いさんにはならない……はず〜。
ささ、どうぞどうぞ〜」

「ふむ、ではお言葉に甘えさせてもらおう」

「甘えさせてもらった」

「おお〜……スーツに仮装っていう変さが
逆にハロウィンっぽいね。いいんじゃないかな」

「そうか。……ありがとう、うづき。
これなら見回りにも支障はないだろう」

「ん〜、どういたしまして〜」

「……あ、そうだ。兄さんのカボチャくんには
これを授けてせんじよ〜」

「む」


「これは……柊鰯?」

「うん、ひいらぎいわし。
お魚が本物じゃないから腐る心配ナシのタイプ〜」

「何故これを?今は節分でもないだろう」

「縁起に良いから〜。
あとお菓子ねだられた時にちょうどいいと思って」

「ほら、柊鰯は最近の子どもに大人気のお菓子だって、
最近の流行も言ってるし〜」

「ふむ」

「……な〜んてね、これは冗

「そうだったのか。いつの間にそんな流行が……」

「未だ俺は世間に疎いな。
……うづきのその博識さ、尊敬に値するよ」


「まあね〜」

「それならば持参させてもらおう。
何から何まで世話になるな」

「……いやあ、それほどでも〜」

「……では、そろそろ見回りに行ってくる。
帰りが遅くなるかもしれないから、夕飯は先に食べていてくれ」

「はあい、わかったよ〜」

「それじゃあいってらっしゃい。
もろもろ気をつけてね〜、兄さん」

「ああ、いってきます。戸締りは頼んだぞ」

「……と、いったように。
俺は予定通りに家を出て、集合場所に向かった」

「時間通りにも望月さんと落ち合うためにも、
真っ直ぐ向かったはずだが」

「気がつけば知らない場所に辿り着いていたな」

「……ふむ、 これは……
紛うことなき非常事態と言えるだろう」

「少なくとも従来の業務の遂行も、今すぐの帰還も難しそうだ」

「……であれば、俺は今できることをするべきだな。
フェストリアの調査、お祭り大魔王の討伐……」

「そしてお祭りを楽しむこと、だろうか」