RECORD

Eno.229 バナーパレードの記録

祝福の門出

光は、目の前のちいさな子に目線を合わせ、何度も確認していた。

「いいですか?もう一度確かめましょう」



「危ないところには?」


「ちかよらない!」


「怪しいひとには?」


「ついていかない!」


「知らないひとからお菓子をもらったら?」


「ありがとう!」


「いりません、ですよ」



怪訝な顔で歩いていく子の後ろ姿を、光はずっと見送っていた。

「心配なら出さずにいればよいものを」


「そうもいきません」



否定して、ため息をつく。

「貴方が一緒に付いて行ってくれたら、安心できたのですが」


「冗談じゃない」


「お守など御免ですよ。貴女の言うことであっても」



光はクスクスと笑った。

「いいえ。貴方の努めを見れば、案外適任かもしれませんよ」


「馬鹿馬鹿しい……」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「♪」



口ずさむのは、聞き慣れたハミング。こんなにきらきらした日にはぴったりだ。

そうして浮かれていたものだから、足元の異変に気付けなかった。

「♪……」


「……?」



声を上げるひまのひとつもないまま。

バナーパレードは輝く喧騒のなかへ落ちていった。