拝啓 信用ならないキミへ
キミがこの手紙を読んでいるということは、俺はもうこの世界を発った後なんだろうね。
ロクに言葉も交わさず、キミからの返事も待たずに去ったことは、まあ、正直悪かったと思ってる。
あの時も言ったけれど、湿っぽいのは好きじゃないんだ。
キミへの贈り物の一つ、『事象を書き換えるペン』だったかな。
これを使えば、俺はキミが"キミ"という独立した存在として確立できるんじゃないかと考えてる。
あ、このペンならもう持ってるとか言わないでよ。
いつかキミに言ったよね、『自分の名前は自分で考えろ』って。
今こそキミが"キミ"に名前を付けて、"キミ"という存在に成ればいい。
その後で、書き換えられた事象の効力が消える前にこの世界を旅立てば、
キミは"キミ"のままでいられるはずだから。
少なくとも、俺はそうなると信じてる。
そういう点では運がよかったよね、他のキミとの繋がりが断たれていてさ。
何の障害もなく、事をスムーズに済ませることができるんだから。
それに、名前を考える時間ならまだ沢山残っているからね。
この世界がほどけきるまでに、自分で納得のいく名前を考えるといいよ。
もし変な名前をつけていたら、その時は思いっきり笑ってあげるから。
勿論、キミが望まないのなら、そうしなくても構わない。
その場合、俺が次に会うキミは、"キミ"じゃなくなっているんだろうけれど。
でも、俺はこうも言ったよね。
『キミが自分の名前について考えるなら、
俺も俺の物語を始めることを考えてもいいかな』って。
これからの俺はキミとの約束を守らなくちゃいけないから、
俺としての物語をまた一から始めなきゃならない。
それなのにキミが約束を反故にするのは、フェアじゃないだろ?
キミがああだこうだとうるさいから、俺から先に約束を守らせてもらったよ。
結局のところ、全てはキミ次第なんだけどね。
たとえキミがどんな手段を使ったのだとしても、
そしてどんな未来を選んだのだとしても、俺はキミの選択を尊重するよ。
ただ、もしこの広い世界のどこかでまた、"キミ"と出逢えたのなら、
その時はロクな別れ方をしなかった謝罪と、
後は、まあ、今より少しは愛想よく振る舞えるように努力するつもり。
俺がキミのことを覚えていられたら、だけどね。
それじゃ、こことは違うどこかの世界で。
またね。
アルバ
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P.S.
ペンと一緒に送ったそれ、もしいらなかったら遠慮なく捨てていいから。
次会う時に「またまたアルバさんったら、キザなことしちゃって」とか言い出したら、パンダだからね。