幻覚
煩い音だ。嵐が来ているらしい。
幸い、テントは持ち込んでいた。
簡易的な拠点にして、おさまるまで待つ。
……休息中、いや、夢の中で休息などおかしな話だが。
霧の中、霞んだ橙色の髪をした人影を見た。
直感で分かった。
俺が償うべき相手だ。
握るナイフが、大きな槍に見えた。
刺し貫いた、あの感覚。
何も覚えない、あの人のためだと。
気持ち悪い。気持ち悪い。
頭を振り払い、いけないと分かっていても駆け寄ろうとした。
人影……彼女は、振り返ることすらなく、去っていった。
いっそ憎んでほしかった。
無関心が、何よりも辛い。
……生き延びて、そうしたら。
彼女の足取りくらい、掴めないものか。