Eno.356 第八使徒

幻覚

煩い音だ。嵐が来ているらしい。
幸い、テントは持ち込んでいた。

簡易的な拠点にして、おさまるまで待つ。

……休息中、いや、夢の中で休息などおかしな話だが。
霧の中、霞んだ橙色の髪をした人影を見た。

直感で分かった。
俺が償うべき相手だ。

握るナイフが、大きな槍に見えた。
刺し貫いた、あの感覚。

何も覚えない、あの人のためだと。

気持ち悪い。気持ち悪い。
頭を振り払い、いけないと分かっていても駆け寄ろうとした。

人影……彼女は、振り返ることすらなく、去っていった。

いっそ憎んでほしかった。
無関心が、何よりも辛い。

……生き延びて、そうしたら。
彼女の足取りくらい、掴めないものか。