無題
お父さん、お母さん。お元気ですか。
俺は今、無人島に居ます…!
なぁんて書いても別に届く訳じゃないんだろうな。今送り主が居ない状況で、テンプレに意味はない。
でも、俺は無人島に居る。これは事実。ファンタジー世界の住人みたいな頼れる仲間に助けてもらいながら、ちょこちょこ手伝ったり、或いは自分の好きなことしたり、色々。
でも驚いたな。嵐で遭難して死ぬっていうのは、技術が進歩してもよく聞く話だ。
極東や南部での紛争は今もなお止むことはなく、輸入輸出、その他諸々での航路にはやはり危険も付き纏う。でも俺はこの仕事に誇りを持っていた。例え危険だとしても、求めている人が居るのなら、そこに荷物を届け、そこで荷物を受け取るのが、俺の仕事だった。
そしてその極東の仕事を終え、再び船に乗ったとき、嵐に会った。
船が転覆までして、水が押し寄せて、挙句の果て海中に投げ出された。
なのに、雨粒の感触と音で目が冷めたら、この無人島だった。ああ、死んだなって思ったのに。
だから、せめて感謝はしなきゃいけない。自分の幸運に、生き残れたことに。
でも、多分ここは別の世界なんだろうな。あの船で俺はきっと帰れないんだろうな。
此処に来て、驚いてばかりだ。俺は少なからず、広い世界を知っているつもりだったのに、世界はもっと広いんだってことを知ってしまった。
宛先不明のボトルメッセージ。沢山の不思議な世界の住人。絵から来た彼。嵐で迷い込んだ俺。
俺は、多分帰れない。そんな気がする。
それなら俺は、どうしようか。どうやってこれから生きていこうか。
このちっぽけになってしまった誇りを胸に。