Eno.105 白飛 燕

蛇足:その後の白飛燕

船は果てしなく続くような波間を滑り、石像やら灯台やらはずいぶん前に見えなくなっていた。
あの島での出来事は、短かったながらも鮮明に記憶している。最初は二人だったものが、三人、四人と増えていき……最後には七人の大所帯と言ってもいい集団になっていた。

「そういえば、これ。結局僕が持ち出してしまいましたね」

手元にある七色のブーケを弄ぶ。どうも不思議な力をもっているらしいが、今こうして救助されている真っ最中にまた変なところに飛ばされでもしたら冗談では済まない。おそるおそる抱えた。

「っと、うわあ! 船の揺れに足を取られて転んでしまう!!」

転んだ。そのときにうっかりブーケを空高く掲げてしまい……
僕は船上から消失した。






「……い、おーい、起きろって。もう着くらしいぜ」

肩をゆすられる感覚で、僕は重たい瞼を持ち上げた。
視界に入ったのは果てしない海ではなく、飛行機の白い内壁だった。

「……夢、だったのか?」
「全く、いくら修学旅行終わりで疲れてるからって俺に起こさせるのやめろよな。めんどくせえ」

高校での友人が乱暴な口調で言う。……修学旅行終わり?

「え、もう修学旅行終わったんですか?」
「そうだよ。寝ぼけてんの? お前しっかりばっちりはしゃいでただろ。どこで買ったのか知らんが、そんな花束なんか握りしめて」

そんな。確かにあの二日間も楽しかったことに間違いはないが、修学旅行もそれはそれで楽しみにしていたのに。
僕の脳内データに修学旅行の事は欠片も残っていない!

……けれども、代わりにあの島での思い出ができたというのなら、不思議と後悔するような気持ちは全く無かった。

「……花束?」

言われて気付く。僕の手の中には、あの七色のブーケが変わらず不思議な輝きをもってそこにあった。
そうか。これは、持ち帰らせてくれたのか。

「つか、よく荷物検査引っかからなかったよな。外国の植物って、なんかこう、日本への持ち込み駄目なんじゃなかった? 先公言ってた気がすんだけど」
「…………え?」


……その後僕は先生と空港職員の人にめちゃくちゃ怒られ、綿密な検査のもと異常なしの判定を頂いてなんとかブーケを持ち帰ることができた。めでたしめでたし。