システムログ

*『エピローグ』


どうにかと水を確保しては飲んで。 いくらかの命を確保しては食べて。
――そうして、この島に流れ着いてから七度目の朝日が登ったのち。

「お~~~~~い」


聞き覚えのない大声の方向には、水平線の上に映る船影と人影。

「……よかった、まだ生きてるみたいだ。
 明かりと煙がぼんやり見えたから向かってみたけど、アタリだったな」

「私はこのあたりを定期的に巡視する一団のひとりだ。
 君がそうであるように……この世界は多いのさ。"そういうの"が」


巡航船を近づけて錨を下ろす、海兵めいた風貌の青年は語る。

「しかし、君は運が良かったな。 先日"この海"が新たに海を取り込み始めたのを確認した。
 あと1,2日もすれば、水位は数メートルと上がるだろう」

「そうでなくとも、この海は迷い込んだ挙げ句に果てることが多いんだ。
 ――本当に、この過酷な海でよく生きていてくれた」


そう言って、青年は伏し目がちに海を眺める。



「さ、準備ができたら船に乗ってくれ。この船は"海"を介して世界を渡れる特別製だ。
 どこでも、君が望む世界の海に送り届けてみせよう」

「ああ、この海や君の話は航行中にでもしよう。
 帰ったあとの辻褄合わせも、必要であれば任せておくれ」


そう言って青年は微笑み、船内へと戻っていく。

あなたは、この島で何かを得られただろうか?
それとも……何かを失ったきりの、ただの災難だっただろうか?

――短くも長い孤島での非日常は、ようやく終わりを迎えつつある。