Eno.328 魔王マイダスの日記

魔建築記録:この世で愛娘に詫び続ける

森林の中に、簡素な建物が建てられた
奥に異形の像がひとつあるだけの、小さな小屋
表札には『懺悔室 罪なき者も休憩・雨風をしのぐのにどうぞ』と書かれている


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「……さて、とりあえずは建てられたか」



「……我らが戦神よ、我の罪、迷いをどうか聞いてください」



私は罪人だ、いや、『罪人でなければならなかった』のだ
島流しの刑となったあと、民が本当は私に罪が無い・贅沢な暮らしなどではなかったと理解してくれればそれでよかった
それがわかれば、私が許されずとも、亡命させた我が娘が再び国に迎え入れられるだろうと……

だが、あの嵐の日にこの島へ流れてしまった
反体制派の暴虐によって『罪なき王が死んだ』ということになってしまえば……
親王派の者から、強い反発が来るだろう
そうなれば、私の血を引くただ一人の娘の運命はどうなるのか……



……


「……気休めはここまでだ、生きて帰る方法を見つけるために……動かなければ」



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私が森の中を散歩していると、ふしぎなあばら家を見つけました
中に入ると、恐ろしい形相の像が置かれているだけの、変な家でした


「う~ん、この家はなんだろう……」
私はこの通信機で唯一つながる友人に、相談することにしました


「雨水さん、先ほど家の間取りを拝見させていただきました。
私が思うに、これは宗教に関わる施設でしょう
雨水さんは、怒った表情の仏像がどういうものか知っていますか?」


「怒った仏像ですか?う~ん……
人間の愚かさに絶望したのかなあ?」


「違いますよ雨水さん、怒った顔の仏像というのは戦の神でもあり、本当は心優しいけれど人々を守るために怒っているんです
なので、この像もそういった神の像だと推測できます」



「ここからは私の妄想も入ってくるのですが……おそらくこの家は、この神様に見守られて何かをするための施設なのでしょう
この広さと何も無さ……道場のようではありませんか?」


「雨水さん、おそらくこの家は……クソデカい力士が、岩盤を割る威力の張り手を修得するために建てられた、修行小屋ではないでしょうか」


「あっ、木の実原さん
懺悔室って、書いてました……」


「……」