Eno.548 アオイ・グッドマンの日記

アンタップフェイズ

私がここにたどり着いて意識を取り戻すまでの間に、様々なドラマがあったことは想像に固くない。なぜなら私が島を徘徊し始めた頃には拠点が整備され、食料や素材を保管しておく準備が整っていたからだ。
しかしそのせいか、ほかの漂着者達は憔悴仕切っている(私もすぐにその轍に続くことになるのだが)。まだ目が覚めたばかりの私は体力が有り余っており、それがいくつかの資材や備品へと姿を変えた。このことが彼らの助けになれたとしたら幸いである。

しかし、誰に話す必要もなく、これからもそうする必要が出てくる場面に遭遇することはないだろうが、私には遭難以前の記憶が存在しない。全く無いというわけではないが、それが一般的な教養に加えて、目が覚めた際に握りしめていたカードゲームのデッキ、そのルールだけだというのだから、ほぼ皆無と言って差し支えないだろう。

私はなぜ後生大事にこのデッキを抱えていたのか、それはわからないが、これを手放すことが記憶の復活の妨げになるということだけは理解できる。