Eno.553 ベテルギウスの日記

1日目

我が主は、数多の世界を渡ったのだという。
世界の境界というのはひょんなことで揺らぐものですよ、ということを俺に教えてくださった。
……ゆえに、現状に対する混乱は少なかった。
記憶のない透明人間、包帯のまかれた老婆、幼女、明らかに何か容姿がおかしいもの。
ウォーターサーバーにその他諸々。
俺にとって見たことのない人間であり、時代の物たち。

きっとこれが世界が違う、ということなのだ。

……まあ、何故こんな場所に集結したのかはわからんが。
我が主に聞こうとしても、海水がよくなかったのか経典はしんとしてしまった。
こんな時にこそ我が主のカリスマでもって皆をまとめるべきだとは思うのだが……。

いや、頼りすぎるのは良くない。俺はあくまでも教徒なのだ。
神への信仰は、他力本願ではない。
それに、主の教は己が行動を起こしてこそ。
俺が出来ることをしよう。ひとまず次は雨水を溜めようか。

しかしどうしたものかな。一週間か。
二人が戻って俺の死を伝えたらクローンが出来てるぞ。
……まあ、そのまま俺は死んだことにして、この世界で生きてもいいかもしれんな。
クローンがいるのに戻ってきたときの気まずさったらないのだ。