Eno.241 平木 夕真の日記

遭難者 ④(終)

≪8年前 10月の頭 薄暮の頃≫

結論から言うと、回収に来る宇宙船は一日遅れた。
そして宇宙船が近づくより先に、地球人が【わたし】を見つけた。


別の回収しやすそうなサンプルが見つかって一仕事増やしたらしいが、
結局そのせいで回収し損ねたサンプルが出来てしまったのだから締まらない。


救助隊に背負われて山を降りる。
時折空を睨みつけずにはいられなかった。


少女が滑落して遭難、そこから二日後奇跡的に軽傷で生還。目立ち過ぎだこんなもん。
当面こっそりと回収してもらう、なんて事は出来ないだろう。

宇宙船も宇宙船で、サンプル1体と四等宇宙人1人だけをわざわざ拾い上げに行くかと言うと怪しい。


(まあ、ユマの家族は喜ぶだろうな……
 わたしがボロを出したりしなければ、一応日常は続くわけだ。)


ユマが楽しみにしていた今週のアヒルバトラーも
録画にはなるが見る事が出来るだろう。
それが彼女の慰めになるかは分からないが、ユマを知るものに違和感を抱かせないためにもしっかり見ておく必要はある。


【わたし】が楽しみにしていた
スペースアヒルバトラーよりも面白くあって欲しいものだ。






こうして小さな遭難者は家路につき、

【わたし】は帰りそびれて、この惑星で遭難者となった。







(なあ、ユマ………)

(君はこれから、どうしたい?)


皮肉にも、ユマの送りたかった日常を【わたし】がたどるしかないのだ。
宇宙人が死んだ娘の身体を乗っ取って家族面をしていた、などと言う事実が露見しないためにも。