教皇庁指定異能『Semiel』
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(1)形状・規模に拘らず「射出」が可能である物質を、
自在軌道、必中必殺の弾丸として発する。
(2)射出対象は術者の視界および認知に依存。
視界内の物質であれば形状・規模問わず機能するが、
対象が視野から外れ、存在の認知のみに留まる状況の場合
射出可能な「武器(*銃火器、投擲)」以外に属する物質は
規模によって可否を左右、現時点ではロバート級を限界とする。
(3)『Semiel』は他者への借与を可能とし
借与は「術者が作製した弾丸」の譲渡によって成立する。
子機にあたる『Semiel』は本来の術者と大幅に異なり、
譲渡された弾丸でのみ必中必殺が発動する。
(4)譲渡は『Semiel』の由来に従って行われ、
必ず7発であり、それ以上か以下でも不成立となる。
借与先には由来と同等の代償が科され、
6発までを必中必殺、7発目を致命的な誤射とする。
『Semiel』本体は代償を必要としない。
(5)かつて闘技者として登録された『Semiel』は典礼秘跡省の支援者による契約を請け、
フラウィウスのルールに則り剣闘試合上のライセンスを厳守した上で
1ラウンド1発、合計5発までの発砲または射出が認められていた。
現在、この契約は終了している。
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『Semiel』は1814年現ドイツ連邦共和国ザクセン自由州で確認された異能です。
引退狩人の書記官▓▓▓▓・▓▓▓▓▓の訴えによって発覚し、
以後消息を絶つも「魔弾の射手」史上6度目の公演で再度出現しました。
当該公演第2幕中、セリフ役である▓▓▓▓▓・▓▓▓・▓▓▓▓は突如カスパール(Bass)を射殺、舞台上から飛び降り乱射、
出演者4名、観客1名が死亡、他少なくとも観客12名に重傷、2名へ軽傷を負わせ、歌劇場から逃亡しました。
事件後、歌劇場に居合わせたシスターが、乱射の過程で破壊された大道具がひとりでに飛び交い、客席へ「射出」されていたこと、
宙空を舞ったパネルが不自然に軌道を変えて子供の脳天を割ったこと、自身も吹き「飛ばされた」ことを証言し、
他負傷者に訊ねようと同様の証言を行って、口々に超常を訴えたことに困り果てた警察は教会の門を叩き
この時点で1814年に書記官▓▓▓▓・▓▓▓▓▓が述べた異能との酷似が発覚しました。
その後、ローマ・カトリック教会は警察と提携、▓▓▓▓▓・▓▓▓・▓▓▓▓捜索に乗り出し、
一度は拘束に成功しましたが、修道者1名、警察7名を殺害し再び逃走、以後の動向は不明であり、
単な倒錯者による案件だったと見切られ、捜査は打ち切りに終わりました。
以上の被害ならびに報せを受け、教皇庁は「人間界に重大かつ深刻な被害を齎しうる」と認め、
これを指定異能▓位『Semiel』と命名・列挙、間もなく聖伐認可が下されましたが、
三度目以上の出現は20世紀以降となり、21世紀現在に至るまで完全な討伐は成されていません。
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『Semiel』はカール・マリア・フォン・ウェーバーの「魔弾の射手」に登場する
悪魔ザミエルに准えられて出現したとする所以が以前の定説でしたが、
初報告となる1814年には「魔弾の射手」は書き上げられていませんでした。
現代では、オペラの着想元である1810年に出版されたヨハン・アウグスト・アーペルの怪談を元に生じ、
後年ウェーバーによる更なる補完を受けての顕現であったと考えられています。
そのため、『Semiel』の性質はジングシュピールによる堅固な世界的認知を獲得しながらも、
より悪辣、陰惨な結末を持つ怪談から来る地盤に形成され、市井が想像しうる「魔弾の射手」に留まらないだろうと
聖座図書館は警鐘を鳴らしています。
また、アーペルの怪談にある『Semiel』はヘブライ語起原の単語であり、異なる綴りを『Samael』、ヘブライ語の原義で「盲人」とされますが、
グノーシス派では「神の毒/悪意」と解釈されており、これは死天使サマエルそのものです。
しかし、あくまで言語上のものであり、指定異能▓位『Semiel』との因果関係は現時点で見出されていません。
現在、『Semiel』はモンゴロイド男性が保有し、既に覚醒状態にあります。
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問、3項。
1,経緯。何の故、吾は此処に。
2,場。此処はいずこか。
3,提唱。外海への経路。
自問自答。
契約に縒り齎された闘技を去りて、
渡航の権利を行使した筈であった。
なればこの様、我が真髄も封ぜられ、
違反者の身一つの丸腰、誠遺憾である。
彼方たちに起こす撃鉄を欠かす今、的にも鹿にもならぬ。
従って、保存本能に基き改善または打破を最優先項、
此を約定とす。