Eno.49 七五三兄妹の日記

Q1:旅行の動機は?

夏の暑さも和らぎ始めた頃、七五三崕家の近所に住む大学生の元に、
後輩にあたる「すとら」から電子メールが届いた。
その内容を要約すると……

『妹と一緒に、民俗学のフィールドワークに行ってくるね』


しかし資料として添付されたURLを開いてみると、正直、これを調査資料と呼ぶには
少しどころではなく難があるサイトが表示され、大学生は頭を抱える。

「……正気か?」


手早く電話で文句をつけようとしたが、スマホの電源を切っているのか繋がらない。
軽い頭痛を覚えたものの、まあ、彼奴はふざけているようで要領のいい男だから、
聞き込みなどの実地調査そのものはちゃんとやるだろう、と思うことにする。

と言うか、まだ初等部の妹を連れて行ったのなら、フィールドワークとは名ばかりの観光旅行ではなかろうか。
旅行ついでに、現地で民話の収集をして来る、と言うだけの話であれば、何ら問題のない話になる。

「ともあれ、何かしらの伝承が残る地域と言うなら、此方でも少し調べておくか。
 行き先は──結木村……ん?」


村の名前を検索サイトに打ち込んでみると、速報マークのついた記事が上位に表示される。
何かあったのかと記事を開くと、連絡船が高波に襲われ、何人かの乗客が行方不明になっているらしい。
現段階では、行方不明者の実名は公開されていないが……すとらに電話が繋がらないことを考えると……

「……そのうち、平気な顔で戻って来そうだな」


特に心配するでもなく呟いて、彼はニュースサイトを閉じた。