Eno.182 ソレイユ・スプランドゥールの日記

スノードロップ

白く、可憐で清廉な、其方にピッタリな名前だ。
…余がつけた、呪いの名だ。

『希望』だ。この悪夢のような生を終わらせてくれる。
『慰め』だ。この悪夢のような生を生き抜くための。
『楽しい予告』だ。死のお陰で、余は今日もまだ辛うじて息ができる。
『友情』だ。微かな時間だが、我らの間にあるのは、確かに。

『あなたの死を望みます』……余の死を、望んで欲しかったから。
余が贈った名前。其方が背負う花言葉。その中に、余への確かな殺意が欲しかったから。

…嬉しかったのだ。「お前を殺します。」「本気で殺します。」そう言ってくれて。
この救いのない生の、終わりを約束してくれて。

身勝手なのは分かっている。人につける名前にこんな意味を込めるなんてどうかしている。

だから、スノードロップ。
安心して余のことを殺してくれ。

同情する余地などない悪い王だから、殺してくれ。
そしたら、その名を捨ててくれ。余のことは忘れてくれ。其方が余に縛られる必要などない。

其方のその後に、幸福がある事を祈っている。










本当は

『希望』だ。もう少し、生きたいと思えた。
『慰め』だ。其方といる時は、この深い絶望を忘れられる。
『楽しい予告』だ。次また絶対に会えるということだから。
『友情』だ。其方にとっては“ごっこ”でも、余にとっては本当の友人だから。

『あなたの死を望みます』この暗い気持ちが、無くなるかもしれないと思ったから。

…嬉しかった。「友達ごっこ」でも、友人となってくれて。

ありがとう、スノードロップ。
今この時間だけは、いつもよりずっと息がしやすい。
今この時間だけは、昔のように、笑っていられる。