3.無題
この島に来てから 考えることが増えたものだ。
疲れたら休まねばならない。何かを食わねばならない。何かを飲まねばならない。無理をすると大層ひだるい。そしてこれが大層気だるい。
ダルすぎて昔のことを ぼんやりと思い出した。
俺たちは生きるにおいて 飢えほど 苦しいことを知らない。
飢えは生物を凶暴にする。無気力にもする。
それでも記憶の中の子どもたちは みんな にこにこと愛らしく笑って その細い手足で踊っていたから。
俺たちは 俺たちは。あんまり哀しくて。
極めて飢えの酷い時。ナナは他の子どもたちへなけなしの食事を分け与えて 木の皮を己の胃へと詰め込んでいた。あんなに長く 骨に沿って皮の張られた ほっそりとした脚を 俺たちは以降見たことがない。
全てが終わった後。そこからセトとして生まれた俺たちは気付かなかったが 今となって見れば他の子どもたちだって 他の者へ見せなかっただけで そういった“遠慮”を行っていたのだろうと考える。俺たちは 賢いので。賢いので。賢くなったので。
俺たちは 偉い兵器なので飢えなんぞ へでもないのだが。
飢える者の存在。これがナナの記憶と重なって 極めて気分を害する。こんなことは初めてだ。子どもたちに会えず 常に記憶の中の彼らの形を探っているので こんなに嫌な心地になるのだろうか。
島で仲良くするだけの 人間ちゃんを彼らに重ねるとは。
俺たちはあまりに慈悲深い。涙の出るほどに。
そのために 資源は常に潤沢で然るべきだし。
俺たちは 常に使える道具であるべきである。
俺たちは 何も間違っていない。
俺たちは 人間ちゃんがどうあろうと 頑張るので。
俺たちは 賢く 強く 愛らしい兵器であるので。
俺たちは いつナンドキでも 使用可能で有るべきなのだ。
さあ。俺たちを 気に入ったでしょう?
俺たちは食いません。飲みません。寝もしません。
俺たちは最低限の手入れで 最高の振る舞いをします。
俺たちは 素晴らしい兵器なのだから!
*
そんな振る舞い 無理なのだ。
最初から。最後まで。
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疲れたら休まねばならない。何かを食わねばならない。何かを飲まねばならない。無理をすると大層ひだるい。そしてこれが大層気だるい。
ダルすぎて昔のことを ぼんやりと思い出した。
俺たちは生きるにおいて 飢えほど 苦しいことを知らない。
飢えは生物を凶暴にする。無気力にもする。
それでも記憶の中の子どもたちは みんな にこにこと愛らしく笑って その細い手足で踊っていたから。
俺たちは 俺たちは。あんまり哀しくて。
極めて飢えの酷い時。ナナは他の子どもたちへなけなしの食事を分け与えて 木の皮を己の胃へと詰め込んでいた。あんなに長く 骨に沿って皮の張られた ほっそりとした脚を 俺たちは以降見たことがない。
全てが終わった後。そこからセトとして生まれた俺たちは気付かなかったが 今となって見れば他の子どもたちだって 他の者へ見せなかっただけで そういった“遠慮”を行っていたのだろうと考える。俺たちは 賢いので。賢いので。賢くなったので。
俺たちは 偉い兵器なので飢えなんぞ へでもないのだが。
飢える者の存在。これがナナの記憶と重なって 極めて気分を害する。こんなことは初めてだ。子どもたちに会えず 常に記憶の中の彼らの形を探っているので こんなに嫌な心地になるのだろうか。
島で仲良くするだけの 人間ちゃんを彼らに重ねるとは。
俺たちはあまりに慈悲深い。涙の出るほどに。
そのために 資源は常に潤沢で然るべきだし。
俺たちは 常に使える道具であるべきである。
俺たちは 何も間違っていない。
俺たちは 人間ちゃんがどうあろうと 頑張るので。
俺たちは 賢く 強く 愛らしい兵器であるので。
俺たちは いつナンドキでも 使用可能で有るべきなのだ。
さあ。俺たちを 気に入ったでしょう?
俺たちは食いません。飲みません。寝もしません。
俺たちは最低限の手入れで 最高の振る舞いをします。
俺たちは 素晴らしい兵器なのだから!
*
そんな振る舞い 無理なのだ。
最初から。最後まで。
ちいさな腕に抱かれて。
きっと、幸せな夢を見ている。