Eno.15 トト・アズハル・イルファンの日記

トトの手記3

島の人間の顔ぶれは何となく把握してきたが.......

正直に告白しよう、僕は彼らの名前をほとんど覚えていない。僕から自己紹介をするように声がけをしておいて、覚えていないというのは大変よろしくないことだ。

だが、今更聞き直すのもどうかと思う。
困った僕は苦肉の策で、書き置きに記された名前を文体から逆引きし、何となく、多分きっとそうだ......と思う名前で認識をしている。


そこで、何時でも見返し間違えることがないように、それぞれの印象をここに書き残しておこうと思う。


まずは、なんとも目を引く2匹の小さなカニと二足歩行をするうさぎ
この生物たちは人の言語を扱うし、同じように道具も使用する。見た事のない新種だと思われる風貌をしているが......まあ、そういうこともあるのだろう。すんなりとこれらの存在を受け入れている自分に疲労を感じる。反応が子供らしいように感じる、人間換算だと何歳なのかわからないが精神年齢は幼いようだ。
名前はたしか、ハサミ、レモン ......?チェロ ......だったはず。

小さい体でよく働く、僕よりも小柄であるのによっぽど役に立つ、素晴らしいことだね。

それから、同年代であろう男はシシ・ルイ......という、はず。
何度か言葉を交わしているし、書き置きで何度もその名を見たのでさすがに彼は覚えた。時々妙な行動を起こすこともあるが、積極的にコミュニティに参加している印象。目標設定が堅実で大変素晴らしいね。

書き置きと言えば、オルテンシアという名前もよく見る。僕にはあまり馴染みのないタイプだ、とてもコミカルな雰囲気がする。彼女は資材調達に余念が無いので、拠点に篭もりきりの僕はとても助かっている。

他には......

煙草を求め森林を彷徨いつつ、大量の木材を運んでくる女、名前は......忘れてしまった。姿が見えるとたちまち話題は煙草に終息するので僕は心の中で彼女をタバコと呼んでいる。それほどに彼女は強烈なキャラクター性をしている。

小さな子供も数人いる。

青みがかった柔らかな髪を持った、海、いや違う、......だったか?は熱心に飲水を確保している。
彼は自分よりも年上の男はみな年老いて見えるようだ、あのセトがムキになっている様子はなかなか愉快であったね。

大きな魚を抱えて帰ってきたの少女...... 髪色が特徴的なのだが、ふむ、思い出せない。すまない。
ただ、食糧の確保に精を出しているのは把握している。小さな体には生き残るための知識が詰め込まれているようだ、大変好ましいね。
好ましいのならば名前を把握するべきだよ、僕。

あぁ、あとはライフラインの構築に余念のない少年もいたな。名前は、ハノア......いや、ハノア...... であったはず。この少年も積極的に活動しているね、少し心配なほど。



他にもこの島には人間がいるのだが.....
一旦、ここまでとしておこう。

なれないことをしたもので、疲れ切っているのだ。
この島の人間たちは、自分も生き残るためといえよくもああ活発に働けるな.......敬意を表するよ。

他者のために自分の身を削るような真似、あの宮殿では絶対にありえなかった。
自分以外は富と名誉を掴み取るための踏み台程度にしか思っていない、あの薄汚く誇りも持ち合わせていない人間たち。

だからこそ、彼らの行動は少しむず痒い。
それでも、僕たちが僕たちでいることを否定されない環境というのは心地のいい。
もしもすべての名前から癖まで覚えてしまったら、僕も少し、別れが寂しくなるのだろうか。