Eno.459 血の四天王の日記

誰かの記憶1

もうずっと、長いこと忘れていた記憶だった
あの日から百幾年、当時の村の風景ももはや曖昧で、そこに暮らす人々も、
肉親の面影も朧げにしか思い出せない

ただあの日、冬至の日の暗い夕暮れ時
私は共を連れず独りで森へ入った
たったそれだけだった

森に飢えた吸血鬼が潜んでいた
赤い色が散って、…痛かっただろうか、忘れたが
凶行が終わった後、日の落ちた森の景色が嫌によく見えたことは覚えている

それからのことは少し曖昧で
聞きたくないことも聞いたし、見たくないものも見たような気がするが
とにかく私は村に帰ることは出来なくて
望まずに与えられたものを受け入れざるを得なかった

…………

サングラスを外して小さく息を吐く

自分の故郷にさえ拒まれた者に何ができるだろうか
随分と買い被ってくれたものだ