Eno.173 ペリペティアの日記

0:少女と夢と憧れと

 
 ペリペティアのパパは、
 立派な立派な冒険家で、
 凄腕のアヒルバトラーだった。

 深い青のアヒルを携えていた。
 氷属性のその子の名前はソルベ。
 いつか旅先でソルベと出会って、
 それ以来、アヒルバトルを
 嗜むようになったんだって。

 パパは基本的に家にいなくて、
 月に一度程度の頻度で戻ってきては、
 様々なお土産と不思議な話を持って帰っていた。

 ペリペティアは、そんなパパが大好きだった。
 パパのお土産を見て話を聞いては、
 夢と憧れが膨らんできて。

「ぼくね、パパみたいになるんだよ!」


 語る自分を優しげに見ていたのを、忘れない。
 パパは、ぼくの誇りだ!

──あの雨の日から、パパは帰らなくなった。

 いつも定期的に戻ってきていたパパは、
 とある日からずっとずっと、帰らないまま。

『これまでで一番のお土産を持って帰る』

 パパの瞳に宿っていた冒険心。
 帰ると言ったのだから、
 ぼくはずっと待っている。

 だけどもう5年も過ぎた。
 ねぇ疲れちゃったよ。
 ぼくはいつまで待ってれば良いの?

 憧れも冒険心も消えないけれど。
 疲れてきていたペリペティアがいた。

 パパがいなくなってから、
 ママは溜め息ばかりつくようになった。
 貴方はぼくらの太陽だったのに。

 でもそれでも、あの頃抱いていた
 憧れは消えないから。
 お土産眺めて、おとぎ話に胸躍らせて!

「──いつかはぼくも、パパみたいに」


  ◇

 そんなある日のこと。
 相棒のアヒル、アクアが手から転がり落ちて、
 ペリペティアはそれを必死で追いかけて。

──気付いたら、目の前は崖。

──ぱしゃり。


 海の向こうに落ちたなら、
 海の向こうに国があるのなら、
 そこにぼくの太陽パパが隠れていたりとか──ないかなぁ。

 アクアと一緒に、崖下真っ逆さま。
 目を覚ましたその先には、
 青い海と白い砂浜が、広がっていた。