◾️ 調査記録【ビスケット家:長女2】
「⋯⋯問診は以上となります。
お疲れ様でした。検診結果は同じくご自宅へ輸送しますね。」
「ええ、お待ちしております。
先生もご苦労様。」
柔らかい女性の声が二つ。
一人は医師で、もう一人は患者だろう。
「エララさん、辛くはありませんか?」
「大きな声では言えませんが⋯
あなたがご家族から不当な扱いを受けていると
噂を耳にしています。」
「あら、まぁ うふふ。」
患者の声はたかが噂だと笑って誤魔化すようにも聞こえるし
本当のことは言えないと言っているようにも聞こえる。
医師はこの患者が『はっきりとした意思表示をしない』ことをいつもの事と
心配そうに深いため息をついた。
「先生、ご心配をおかけしました。
でもわたくし、覚えはなくってよ。」
「みなさんそう言います。」
「でも、本当に覚えがないのよ。」
うふふ、と可笑しそうに声が溢れる。
心底から疑っていないという感情を、そこからは読み取れない。
「一体誰にそんなことを、なさるというの?」
「⋯⋯あなたなら、ご存知では?」
「いいえ?全く。」
医師はまたため息をついたが、「だって、」と珍しく紡がれる
患者の言葉に少しだけ警戒するように椅子を引いた音がする。
「わたくし、魔王になるんだもの。」
「ねえ、先生。
録音なんて面白いことをなさるのね。」