トトの手記4
さて、我々が漂流している島について書き記しておこう。
この島は、漂流者たちによって「タバコ島」と命名された。
今思い出してもこれから沈んでいこうとする島の名を、宴の終わり際のような流れで決めてしまってよかったのだろうか?と考えてしまう。7日ほどの短い時間しか海上に姿を見せない幻のような島が、タバコ島。大胆にもほどがある。
まあ、そんな冗談みたいな事を言ってられるうちは元気な証拠だ。右も左もわからない、極限状態でのサバイバルでにこやかに笑い合うなど、普通ありえないのだから。
漂流者たちは気のいい奴なのか、はたまたどうしても帰りたいからかとても協力的だ。
生活基盤を整えるための提案をすれば、二つ返事で大量の資材を調達して来てくれるし、喉の渇きを訴えれば、安全に飲める水を差しだす。自身の飢えているのに関わらず他者に食事を振舞う者までいる。
我が国では考えられない状況だと思わないか?
まあ、個人で勝手に動いていると飢えて、野生動物に襲われて、簡単に死んでしまう環境がそうさせるのかもしれないが。
とにかく、僕のようにひ弱で日中は何の役にも立たない男でも、なんらかの役割をいただけ、発言権も与えられている。人に恵まれているなとつくづく思う。自分で言うのもあれだが、少年少女が果敢に探索をしている中、ぬくぬくと他人の建てたテントの中で、他人の集めた資材を使い工作をしている成人男性など邪魔でしかないだろう。懐の広い奴らだ。
問題があったとするならば、昼ごろに降り出した雨だ。
我々の国では少し雨が降ることがあっても、ザアザアと音を立て、テントの布地が撓むほどの雨は降らない。経験したことのない酷い雨だった。雲の動きや形から、所謂嵐と呼ばれる悪天候へ変化するのではないかという予測はできても、実際に目にしたことはないため、確信は持てなかったのである。
そのため、僕は目先の食糧不足問題の解決などを優先してしまった。
段々と強くなっていく風の音が耳まで届いているというのに、我々の頭からは布製のテントなどあっという間に飛んでいくだろうという、当たり前の思考は吹き飛んでいた。ギリギリのところでセトが壁を作り終えたからよかったものを、間に合わなかった場合、僕たちはどうなっていたのだろう。遠くから聞こえる雷鳴や横殴りの雨を思うとゾッとする。
・
・
・
そう言えば、あの時の僕は冷静さに欠けていて、彼らをとても不愉快な気持ちにさせてしまったのではないだろうか……。僕の提案を気軽に了承してくれる人間の意見を否定するなど、本当に嫌なやつだ。否定がしたかったわけではないのだが、今となってはただの言い訳に過ぎない。
正しく協力しあわなければ帰ることも出来ないし、いつか誰かが言ったように僕など簡単に捨て置かれることだろう。生まれも育ちも、文化も、何もかもが不揃いのこの島ではもう少し配慮が必要だった。
やはり、僕の話し方では威圧感があるだろうか?
もう少し柔らかく話さなければ誤解をうむのではないか?
ここには、僕を傷つけてやろうなんて人間はいないのだから……気を張り続けなくともいいのではないか?
この島に流れ着いたのが僕ではなく、あのやかましい子供らだったら、セトはもう少し頼り甘えただろうか?
オーラン、君ならどうだ?君は優れた能力を持つ王だからね、きっと大いに役立つのだろう。僕とは大違いだ。
・
・
・
こんなことをぐるぐると考えてしまうのは、きっと、この嵐に心が乱されているからなのだろう。もう過ぎたことなのだ。
それに、こんなくだらない記録に貴重なインクを使うくらいなら、もっとタメになることを記すべきである。
なぜなら、これはあくまでも漂流記の執筆のために付けている資料なのだから!
ここまでは全てカットだぞ、愚かな僕よ。
この続きは、またあとにでも……
この島は、漂流者たちによって「タバコ島」と命名された。
今思い出してもこれから沈んでいこうとする島の名を、宴の終わり際のような流れで決めてしまってよかったのだろうか?と考えてしまう。7日ほどの短い時間しか海上に姿を見せない幻のような島が、タバコ島。大胆にもほどがある。
まあ、そんな冗談みたいな事を言ってられるうちは元気な証拠だ。右も左もわからない、極限状態でのサバイバルでにこやかに笑い合うなど、普通ありえないのだから。
漂流者たちは気のいい奴なのか、はたまたどうしても帰りたいからかとても協力的だ。
生活基盤を整えるための提案をすれば、二つ返事で大量の資材を調達して来てくれるし、喉の渇きを訴えれば、安全に飲める水を差しだす。自身の飢えているのに関わらず他者に食事を振舞う者までいる。
我が国では考えられない状況だと思わないか?
まあ、個人で勝手に動いていると飢えて、野生動物に襲われて、簡単に死んでしまう環境がそうさせるのかもしれないが。
とにかく、僕のようにひ弱で日中は何の役にも立たない男でも、なんらかの役割をいただけ、発言権も与えられている。人に恵まれているなとつくづく思う。自分で言うのもあれだが、少年少女が果敢に探索をしている中、ぬくぬくと他人の建てたテントの中で、他人の集めた資材を使い工作をしている成人男性など邪魔でしかないだろう。懐の広い奴らだ。
問題があったとするならば、昼ごろに降り出した雨だ。
我々の国では少し雨が降ることがあっても、ザアザアと音を立て、テントの布地が撓むほどの雨は降らない。経験したことのない酷い雨だった。雲の動きや形から、所謂嵐と呼ばれる悪天候へ変化するのではないかという予測はできても、実際に目にしたことはないため、確信は持てなかったのである。
そのため、僕は目先の食糧不足問題の解決などを優先してしまった。
段々と強くなっていく風の音が耳まで届いているというのに、我々の頭からは布製のテントなどあっという間に飛んでいくだろうという、当たり前の思考は吹き飛んでいた。ギリギリのところでセトが壁を作り終えたからよかったものを、間に合わなかった場合、僕たちはどうなっていたのだろう。遠くから聞こえる雷鳴や横殴りの雨を思うとゾッとする。
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そう言えば、あの時の僕は冷静さに欠けていて、彼らをとても不愉快な気持ちにさせてしまったのではないだろうか……。僕の提案を気軽に了承してくれる人間の意見を否定するなど、本当に嫌なやつだ。否定がしたかったわけではないのだが、今となってはただの言い訳に過ぎない。
正しく協力しあわなければ帰ることも出来ないし、いつか誰かが言ったように僕など簡単に捨て置かれることだろう。生まれも育ちも、文化も、何もかもが不揃いのこの島ではもう少し配慮が必要だった。
やはり、僕の話し方では威圧感があるだろうか?
もう少し柔らかく話さなければ誤解をうむのではないか?
ここには、僕を傷つけてやろうなんて人間はいないのだから……気を張り続けなくともいいのではないか?
この島に流れ着いたのが僕ではなく、あのやかましい子供らだったら、セトはもう少し頼り甘えただろうか?
オーラン、君ならどうだ?君は優れた能力を持つ王だからね、きっと大いに役立つのだろう。僕とは大違いだ。
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こんなことをぐるぐると考えてしまうのは、きっと、この嵐に心が乱されているからなのだろう。もう過ぎたことなのだ。
それに、こんなくだらない記録に貴重なインクを使うくらいなら、もっとタメになることを記すべきである。
なぜなら、これはあくまでも漂流記の執筆のために付けている資料なのだから!
ここまでは全てカットだぞ、愚かな僕よ。
この続きは、またあとにでも……