Eno.101 フィルマの日記

きれいなはねのデザイナー 3



しごとにとりかかるまえに フィルマはひとつ いえのきまりをおしえてくれました。
にかいのかどに ぽつんとある かぎのかかったへやには
ぜったいにはいっては いけないという きまりでした。
そこには かれにとってたいせつなものがしまってあるそうです。
カインのまえに はたらいてくれたひとは
それみたさに かってに はいってしまったので
かいこするしか なかったのだと すこしかなしそうにしていた
フィルマのかおを カインはじっとみつめていました。

カインのはたらきぶりは おせじにも いいとはいえませんでした。
それもそのはず はねをもつものたちのなかには おままごとのようなかんかくで
しごとをするものも いましたが たいはんは はたらかずに
たのしく あそんで くらしているからです。
もちろん はたらいているほうが よいくらしが できるのですが、
いきていくために たべものもいらない かれらにとって
ほかのひとより よいくらしをするために ひっしになるひつようなんて ないのです。
カインもそんなふうに たいようのひかりをあびてめざめて
そらにほしがかがやきだすまで のんびりあそんで くらしていました。

それでもカインはけんめいに はたらきました。
じょうずにできないカインに フィルマはいちどもおこるどころか、
ひとつてつだいをするたびに たすかるよと ほほんでくれたのです。
ときおり きゅうけいもだいじだと てをやすめては、
とても おいしいおちゃがしと ほんのりあまい おちゃをふるまってもくれました。
そんなふうに やさしくしんせつにしてくれる フィルマのために
カインはいままでの のんびりしたくらしを わすれたかのように
まいにち まいにち なれないしごとを ひっしにこなしました。

「きれいなはねのもちぬしは きっとこころも
 とびきりきれいなんだろうな」

たにんのえがおのために はたらくことが たのしいだなんて
しりもしなかったカインは とてもじゅうじつした せいかつをおくっていました。

けれども。

やさしくわらうフィルマをみているうちに
しんせつにしてくれるフィルマとかかわっているうちに
こんなに きれいなそんざいは このよにあるのだろうかと
ちいさなぎもんが カインのなかに ふと わきました。

だって どうかんがえてもおかしいのです。
このよのなかに けがれがひとつもないひとなんて そんざいするはずがありません。
じぶんが ほかのはねよりも うつくしいと おごっていたときのように
はねをもたないものたちとは おなじしゅぞくではないと おもうように

だれもが そのこころに きたないなにかを かくしているにきまっています。

「……そっか だから だれもいれられない へやがあるんだ」

そんなふうにかんがえていた カインはそう ひらめきました。
きっとあの とざされたとびらのおくに かれがかくしたい
だれにもみせたくない きたないいちめんが しまわれているに ちがいありません。

「みられちゃったから まえのアシスタントは かいこしちゃったんだ」

そういえば じぶんのまえに はたらいていたひとが
だれなのか ちっともしりません。
きっと みられたはずかしさで フィルマがどこかへ おいやってしまったのでしょう。

「…………きっとばれない ちょっとみるだけなら」

あのきらきらかがやく ほしのような いずみのような きれいなひとに
もしもとびきりみにくくて きたないいちめんがあったのなら

「……ああ それってすごく」

カインのなかに いままでかんじたことのない
おもく あつくて ひどく いとおしいきもちが わきあがります。
これはいったい なんなのでしょう。
とびらをあけてみたら このきもちのなまえも わかるでしょうか。


つづく