2:冒険家は、生きて
『冒険家は、生きて帰ってこそ』
パパは、よく言っていた。
どんなに大変な冒険でも、
パパは必ず帰ってきていた。
だからわたしはあの日も、
帰ってくるのを、信じてたんだ。
嵐の日。
『とびっきりの宝物を見つけてくる』
なんて言って、パパは出掛けて。
──そして、もう、5年、帰ってきていない。
冒険家は、生きて帰ってこそなんじゃないの?
帰ってこない冒険なんて、
誰にも語れないし、

「……寂しい、だけじゃんっ」
だからわたしは、あの日から決めていたんだ。
わたしはパパみたいな冒険家になる。
そしてパパとは違って、
絶対に帰るんだって。
あんな悲しみ、太陽が消えた絶望、
他の人に味わっては欲しくないでしょ?
パパのことは大好きだけど、
その点だけは、大っ嫌いだ。
そして──
◇

「…………」
どうしてなんだろ。
何を間違えたんだろ。
そりには珍しい魚と、
他にも色々を積み上げて。
たからもの、さがしてた。
嵐の中で、ひたすらに。
だけど。

「しにたく……な……」
──どうして、身体が動かないの???
万全の準備をしてた。
たっぷり休んで、お弁当も持ち込んで。
何か見つけられると思ってた。
絶対に帰れると思ってた。
なのに。
石がぶつかって血が流れる。
飛んできた枝に肌が切れる。
痛いな。痛いよ。
それでも、諦めないで探索してたら、
脚は、もう、立ち上がる力を持たない。
声は、かれて、助けを、呼べない。
『冒険家は、生きて帰ってこそ』
意識してたのに。
わたしは、あんな風にはならないって。
でも動けない。身体が重い。
意識は靄が掛かったようで。
ここで死ぬのかと、絶望が心を覆った。
頭をよぎったのはオーコ。
わたしの、素敵なともだちのこと。
約束したのに、果たせないの?
あの子に、わたしと同じ想いをさせるの?
引き際見誤って、命を危険に晒して。
馬鹿みたいだ。パパと同じじゃないか。
いちばんなりたくない、わたしじゃないか!
しにたくない。強く思っても、
身体を誤魔化すことは──

「──これは無事じゃないと
判断させてもらいますよ!」

「……やあ。
こんなところで、なにしてるの」
ゆめかと おもった。
こんなあらしのなかで とびだすひとは。
たすけてもらえた。
いたみが くるしみが ひいていく。
ぼやけた視界の中 マツドとリユが見えた。

「…………」
気が付いたら、介抱されていた。
感じていた死の足音は、遠ざかっていた。
たすかったんだと、安堵が、かけめぐった。
ごめんなさい。
かろうじて つないでいた いしきが
かんぜんに おちていく。
あとで あやまらなきゃ。
ごめ な さ ──