4:大森林へ
街道のウェアウルフクエストから数日後。彼らは東の方へ向かっていた。
あの後数日、城下街に滞在して、いくつかのクエストをこなしていった。それで資金をつくって、装備をもう少しいいものにして、食料や魔法薬を買って。
それから、魔王城の方に向かうため、まずは東の方へと向かっている。
「……ともかく、一旦浄化の話については伏せておくべきだろうな。魔王退治どころじゃなくなる」
「うん……で、でも、できる限り瘴気とか魔物で困っている人は助けたいんだ」
「その気持ちはわかる。が、どうにか誤魔化すしかないな……」
徒歩の旅。平原のような場所の遠くに見える木々へ向けて歩く。
「ま、どちらにせよ三将軍はどうにかしなきゃならないし……その時考えるか」
「三将軍?」
「えっ、まさかお前、それも……」
「うん、ごめん、知らないや」
ズコーッ、とディータがコケた。
「あの数日で単語すら耳にしなかったのか??!!」
「あっ、っちょっとだけ聞いたかも。東になんちゃら」
「……あー。耳かっぽじって聞けよ?」
要するに、魔王軍の最高幹部。三人いて、それぞれ東、北、そして魔王城を拠点としている。
人間の領域を脅かし、濃い瘴気を広げている。
「で、東の大森林……今向かってるとこだな。そこを拠点にしやがってるって噂があるんだ」
「へー。ちなみに、南と西は?」
「南はそもそも俺達人間の本拠地。東から西に向けてデカい川があってお互いに攻めづらい。西は聖都があるようなどっちかというと神聖な領域で人も魔物簡単に入れない」
「なるほど……」
東の大森林は、豊かな魔力と植生を備えた土地だった。けども、三将軍のひとりがその大部分を支配してしまい、貴重な薬草や魔法資源が取れなくなってしまった。
なんなら、大森林に存在していたひとつの街が消えている。……故に、薬草や魔法薬や魔法具、ないしはそれらを用いて作る武器防具が値上がりしているのだ。
「それに、瘴気をどうにかしないとなかなか進みにくいと思う。」
「浄化してから先に進もうってわけだね。……隠すんじゃなかったの?」
「それはそれでこれはこれ、だ!」
「ええ……?」
木々が近づくにつれ、何か聞こえることに気が付く。それは、人の叫び声だということが分かった。
「……ディータ!」
「無論だ!」
二人は駆け出した。音の方へと。
「た、助けて!」
小さな女の子が、蛇のような巨大な魔物に今にも食べられそうになっていた。
シュルシュルといった音としたたる唾液が生理的な嫌悪感を煽るような、黒い魔物。
大口を開け、一口……になることはなく。
肉と骨が斬れる音がしてから、魔物が前後に真っ二つになった。
「大丈夫?!」
エルディスは剣を鞘に納めると、女の子の方に駆け寄った。女の子は安心したのかどうなのか、わ、と泣き出してエルディスに抱き着いた。
「うわーーーーーん!」
「わ、えっと、えっと。だ、大丈夫だよ」
どうしたものかと慌てふためくエルディスの背後に、真っ二つにされた魔物の前の部分が首をもたげて、喰らおうとした。
しかしその試みは、ヒュン、といった空を斬るような音とともに砕け散った。
「とどめはきちんと刺すべきだ。お前はそういうとこが甘い」
「あ、あはは……ありがとう、ディータ」
ディータも剣を納めると、ため息をつきながら長い金の髪を耳にかけた。
「まったく……」
「お、おぉおお!アンタらがコイツを倒してくだすったんか!」
奥の方から、老人を先頭に数名の人間が出てきた。その後ろにいる女性を女の子は見つけると、エルディスから離れて駆け寄っていった。
「ママーーーー!」
「あ、ああ……!無事で、本当に、本当に……!」
母親だったらしく。女の子と抱き合っている。
周囲をよく見ると、どうやらここは小さな村らしい。
「……あなた方がここの住民ですか?」
老人はエルディスの問いかけに頷く。
「ええ……中でお話致しますじゃ。死体は此方で片づけますから」
そう言う老人について行くことにした。
ふとエルディスは何かを感じたのか、立ち止まって振り向いた。
森の中に駆けていく、青い髪の少女の後ろ姿が見えた。
「……?」
「エルディス?行くぞ?」
「あ、うん!」
気になる気持ちを一旦置いて、彼らは一番大きな建屋に入った。
あの後数日、城下街に滞在して、いくつかのクエストをこなしていった。それで資金をつくって、装備をもう少しいいものにして、食料や魔法薬を買って。
それから、魔王城の方に向かうため、まずは東の方へと向かっている。
「……ともかく、一旦浄化の話については伏せておくべきだろうな。魔王退治どころじゃなくなる」
「うん……で、でも、できる限り瘴気とか魔物で困っている人は助けたいんだ」
「その気持ちはわかる。が、どうにか誤魔化すしかないな……」
徒歩の旅。平原のような場所の遠くに見える木々へ向けて歩く。
「ま、どちらにせよ三将軍はどうにかしなきゃならないし……その時考えるか」
「三将軍?」
「えっ、まさかお前、それも……」
「うん、ごめん、知らないや」
ズコーッ、とディータがコケた。
「あの数日で単語すら耳にしなかったのか??!!」
「あっ、っちょっとだけ聞いたかも。東になんちゃら」
「……あー。耳かっぽじって聞けよ?」
要するに、魔王軍の最高幹部。三人いて、それぞれ東、北、そして魔王城を拠点としている。
人間の領域を脅かし、濃い瘴気を広げている。
「で、東の大森林……今向かってるとこだな。そこを拠点にしやがってるって噂があるんだ」
「へー。ちなみに、南と西は?」
「南はそもそも俺達人間の本拠地。東から西に向けてデカい川があってお互いに攻めづらい。西は聖都があるようなどっちかというと神聖な領域で人も魔物簡単に入れない」
「なるほど……」
東の大森林は、豊かな魔力と植生を備えた土地だった。けども、三将軍のひとりがその大部分を支配してしまい、貴重な薬草や魔法資源が取れなくなってしまった。
なんなら、大森林に存在していたひとつの街が消えている。……故に、薬草や魔法薬や魔法具、ないしはそれらを用いて作る武器防具が値上がりしているのだ。
「それに、瘴気をどうにかしないとなかなか進みにくいと思う。」
「浄化してから先に進もうってわけだね。……隠すんじゃなかったの?」
「それはそれでこれはこれ、だ!」
「ええ……?」
木々が近づくにつれ、何か聞こえることに気が付く。それは、人の叫び声だということが分かった。
「……ディータ!」
「無論だ!」
二人は駆け出した。音の方へと。
「た、助けて!」
小さな女の子が、蛇のような巨大な魔物に今にも食べられそうになっていた。
シュルシュルといった音としたたる唾液が生理的な嫌悪感を煽るような、黒い魔物。
大口を開け、一口……になることはなく。
肉と骨が斬れる音がしてから、魔物が前後に真っ二つになった。
「大丈夫?!」
エルディスは剣を鞘に納めると、女の子の方に駆け寄った。女の子は安心したのかどうなのか、わ、と泣き出してエルディスに抱き着いた。
「うわーーーーーん!」
「わ、えっと、えっと。だ、大丈夫だよ」
どうしたものかと慌てふためくエルディスの背後に、真っ二つにされた魔物の前の部分が首をもたげて、喰らおうとした。
しかしその試みは、ヒュン、といった空を斬るような音とともに砕け散った。
「とどめはきちんと刺すべきだ。お前はそういうとこが甘い」
「あ、あはは……ありがとう、ディータ」
ディータも剣を納めると、ため息をつきながら長い金の髪を耳にかけた。
「まったく……」
「お、おぉおお!アンタらがコイツを倒してくだすったんか!」
奥の方から、老人を先頭に数名の人間が出てきた。その後ろにいる女性を女の子は見つけると、エルディスから離れて駆け寄っていった。
「ママーーーー!」
「あ、ああ……!無事で、本当に、本当に……!」
母親だったらしく。女の子と抱き合っている。
周囲をよく見ると、どうやらここは小さな村らしい。
「……あなた方がここの住民ですか?」
老人はエルディスの問いかけに頷く。
「ええ……中でお話致しますじゃ。死体は此方で片づけますから」
そう言う老人について行くことにした。
ふとエルディスは何かを感じたのか、立ち止まって振り向いた。
森の中に駆けていく、青い髪の少女の後ろ姿が見えた。
「……?」
「エルディス?行くぞ?」
「あ、うん!」
気になる気持ちを一旦置いて、彼らは一番大きな建屋に入った。