Eno.7 禍津神陽 セトの日記

7.無題

我々の島へ岩風呂ができた

岩風呂です。岩風呂だが??ただの風呂ではない。
これが何を意味するかご理解頂けるだろうか。俺たちはお風呂大好きです!だがしかし ドラム缶で沸かされただけの無骨な風呂に 俺たちの些か立派美しすぎるこの身体を沈める度 ドラム缶から俺たちの形と同じく押し出された湯がばっしょりと撒き散らされて 若干肩身の狭い思いをしていたので とても喜ばしい。


こういった広々とした風呂は とってもいいねえ。もうドラム缶の中へ 缶詰の中身のようにギュッと詰まって 今顔面をぶん殴られた場合 一切の抵抗が出来ないなあ などと考えながら風呂へ入らなくてもよいのだねえ。この島では荷物を身体に括り付けてたくさん持てる 以外には特に意味もなく三又に分かれている尻尾が ドラム缶の底へ嵩張って嵩張ってしょうがなかった。それでも まさか 上下逆さまに 突き込む訳にも行くまい。

たった二回 日が沈む間だけの出来事とはいえ本音を言えば大変つらかった。本来 憩いのひとときである風呂が心理的にも肉体的にも 拷問の如くであったのは初めての経験だ。

一生懸命 犬どものように探索をしたり 朝な夕な木を切るなどすると 貧弱な人間ちゃんのボディは一瞬で結構メチャクチャとなるので 一日の風呂が一度で済むはずもない。
風呂超狭い……だが俺たちは今野生動物のように汚らしい……と 己の方が優位と懸命に飛び跳ねる意思を 計りへ掛けて 風呂の支度をするのは 心へ大分と痛みを伴ったので。

俺たちはものづくりを苦手とする関係上 あまり上手いやり繰りや 工夫については思い至らないが これはとっても嬉しい!きっと俺たちはしばらく 嬉しい嬉しい喜ばしいと言い続けるであろうね。

だが ひとつ言えば この穏やかさ 静かさが少しだけ……少しだけもの足りないねえ。
思えば俺たちの特性上 独りでこんなに広い風呂へ入ることはなかった。風呂を時間の無駄だと宣いながら 書庫で書き物をしているため 日に日に埃っぽくなる トトを風呂へ沈めたり。風呂場で思い思いにはしゃぎ回る 子どもたちの面倒を見るために同伴したり。
余っ程酷い“王族の背中を流す”時だろうと 俺たちは誰かと風呂へ入っていたのだな。こういう時 どう溢せばいいのでしょう?
落ち着かないので 誰でもいいので
一緒に入ってくれ?


いーや。よく考えなさい。
共に入ったら入ったで きっと邪魔であろう。
キット 邪魔であろうからなあ〜。

矢張り 俺たちには 必要のないものです
お背中流すくらいは してもいいのかも知れん。