Eno.15 トト・アズハル・イルファンの日記

トトの手記8

 飲料の確保のため、少年が製作した濾過装置を使用させてもらった。
 綺麗な水を抽出するのには少し時間がかかるようだが、この蒸し暑い島で煮沸消毒など、正直やっていられない。どうしてのどの渇きを潤すための水を汗をかきながら作らねばならないのだ。
 それに、料理も盛んにおこなわれだしたので燃料を残しておいてやった方がいいだろう。彼らは、皆で食事を分け合い食べるのが好きなようだからね。僕はそれを口にはできないのだが、その行動は彼らを信用していないと言っているような、そんな気がして、少し苦しい
ただ腹を満たし満足げな彼らの顔を見るのは嫌いではない

 濾過した水を実際に飲めるかどうか、責任を以て試しに少し飲んでみたのだが、なんとなく口触りが良い気がした。あの小さな少年がここまでの物を一人で作り上げるとは、名誉勲章に相応しい働きぶりである。

 全ての濾過を終えた頃、誰かが果汁を搾りジュースとして振る舞っていたのを思い出し、自分でも作ってみることにした。軽く切れ込みを入れた橙色の木の実を、石臼の隙間に放り込んでゆっくりとハンドルを回してやれば、ゴリゴリと石の擦れる音と共に爽やかな柑橘類に似た香りが漂ってくる。こうして僕がせっせと搾った果汁を彼らは何の疑いもなく飲むのだろう。
彼らが僕のように何も疑わずに、美味しいと食事を楽しめたならそれでいいのである。


 さて話は変わるが、時を同じくして、ネオ・タバコ島の命名者 オルテンシアがイカダでの大航海に飛び出していた。

 結果から言うと、大失敗、と言わざるを得ない。大破したイカダであった残骸で身を支え、ずぶ濡れでぼろぼろになりながらなんとか帰還を果たした彼女の姿にはギョッとしたが、溺れたり他所へ探されたりせずに、無事に戻ってきたのは大変喜ばしいことであった。

 ただ、彼女がイカダを作りたいと熱望していたのを知っている身としては、あまりにも気の毒で。僕は失敗も愛すべきものと考えているが、期待に胸を膨らませて冒険に旅立ったであろう姿を思うと、表に出さぬだけで気を落としているのではないかと心配になる。

 彼女の言っていた海底都市……は難しいだろうが、海岸から見える小さな島くらいにはいかせてやりたいと思うのである。

 そのためには我々は考えなければならない。
 何事も、考えに考え尽くした先に結果は待っているのだから。


ーー追記ーー
 
 セトが氷室の建造を終えた。中に入ってみればとても涼しくて、非常に良いものであった。
 この施設は、温暖なこの地のオアシスになるであろう。

 無人島で調達した素材で作り上げたため、我が国でも比較的簡単に作成できるのではないか?今後、参考になると思い写真も撮影しておいた。
 まあ、これを再現するためには氷の入手が必要なのだがね。
 きっと何とかなるだろう。