Eno.553 ベテルギウスの日記

前日譚

俺に今回与えられた任務は、先日の地震で起きた地割れの調査だ。
足を滑らせれば最後、まあ死ぬだろうなという高さをロープ数本を命綱にして降りていく。
人の命よりこういった資材のほうが貴重だから仕方ない。
なんせ死んでも俺たちには『次』があるもので。

「それでは、シリウス、プロキオン、何時ものように俺の後に続け。
 それから残りのメンバーはきちんとロープの支えを頼むぞ。
 いつものように合図は3回。行くぞ!」

声を張り上げ、そこが見えない穴倉へ。
何が眠っているのかわからない、宝の山だと上司は言っていたが……
そうなら助かるのだが、正直あまり楽観視はしていない。
ゆっくりとロープがさがり、3人分の身体が闇の中へと沈んでいく。
地中にガスが溜まっている可能性があるため、
1人1人の間には1メートルほどの距離がある。
カナリアより軽い命だ。本当に。

持たされた照明をゆっくりと回し、まだ問題のないことを伝える。
これが動かなくなったら何かあった証拠で、
他の二人は回収されておれはめでたく死ぬのだが。

しかし、しかしだ。
気のせいでなければ、先ほどからまるで波打ち際のような音が響いているような。
ここは地下だぞ、何故……。

「ベテルギウス、何かいるぞッ!」

シリウスの声で意識して初めてかすかに聞こえたのは何かの駆動音。
僅かに見えたとおもった光はレーザー光線で、
俺の胴体に結び付けていた命綱を秒で焼き払ったのだった。

固い床に叩きつけられるかと思った俺の身体は、
何故か深い深い水の中へと落ちて行ったのだ。