Eno.15 トト・アズハル・イルファンの日記

トトの手記10

 勇敢なバスガイド、オルテンシアの目論見は失敗してしまったが、新大陸への進出は煙草の君ボタンが製作した浮き橋によって果たされた。彼女もまた、バスガイドのように煙草を求め、新天地を目指したかったのだろう。その働きに見合った対価が得られることを祈っておこう。
 その際、なぜかまた島の名前が再び変わったのだが、だか、だか、わからなくなったので後に確認しておこう。

 この離島、なかなか面白い。
 本島の森に似た生態系ではあるなのだが、より多くの木の実がなっており、凝った食事を作りだした島民にとっては喜ばしいことだろう。だが、そこは僕にとってはどうでもよいのだ。一番愉快なのは、不可思議な花が咲いているのことなのだから。

 ひんやりとした冷気をその身から放つ青緑色の花に、触れると火傷してしまいそうな赤紫色の花。発見したときは何とも頓智気な見た目と性質に心が躍った。本島とはまた違った特異性がここにはあるのだろう。ただ、この二つは洞穴で採取できる奇妙な石とほとんど同じようなもので、見目が異なるだけの似た物質なのだと僕は結論付けた。

 それよりも紫色の花弁を持った慎ましいの方がずっといい。我々の生きる世界とこの島では常識などがまるで違うことが多々あるが、これに似たような花を、以前文献で見かけたことがあるのだ。全く同じものかと言われたら違うのだが、もしもこれがそうなのだとすれば、この島の医療はまた一歩先へ進むだろう。今は包帯であったり、湿布のようなものだったり、負傷時の応急手当になるものが主であるからね。
 実に楽しい。時間ができたら、早速試作してみよう。

 そういえば、セトがあの派手な見た目の花一つで大喜びしていたが、きっと何かの調理に活用できたのだろう。僕は料理の知識はからっきしなのであの花への興味は更に失せていく。まあ、でも、あいつが何やら楽しそうに調理をしている姿は、宮殿にいた時を思い出すし、元気そうで安心する。こんな環境だ、息抜きにも自信が楽しいと思えることをするのが大切なのだ。
 また、フィールドワークの際に見かけたら、くれてやらんこともない。

 そにしてもここまで寒い夜というのはやはり慣れない。両親が亡くなった日も冷たい夜だった……が、ここまではない。冬季になるとひんやりと冷たい空気に満ちる宮殿の空気が少し懐かしく思える。こんなことを考えるというのは疲れが溜まってきた証拠なのだろう。そろそろ休まなくてはと考え、ぼんやりと火を眺めていると、遠くから汽笛のような音が聞こえる。


 なんだかもう少しで君に会えるような気がするよ、オーラン。
 土産話と。ちょっとした贈り物も用意したのだ。
 だから、それまで僕を忘れずに待っていておくれ。