Eno.91 シィリヤーレルの日記

【5 嘘を吐く】


 ずっとずっと真面目に頑張ってた。
 望まれるように、ひたすら。
 だけど周りは、そんな僕を──

「……疲れたよ」



 真面目に生きてる僕は評価されなくて、
 ワガママに生きてるアイツが大事にされた。
 間違いだと思った。この世界は間違ってる。

 疲れたんだ、疲れたんだよ。
 だから、僕は。

にこり、へらり。


──嘘を吐く。

 真面目に生きるだけはもうやめた。
 真面目に生きるだけ損ならば。

──嘘を吐く。

 君の欲しい言葉は何だい?
 演じてあげましょう、望むままに!

──嘘を吐く。

 いつしかそれが、当たり前になった。
 仮面の外し方が、分からなくなっても。
 本当の自分が、分からなくなっても。

──嘘を吐く。嘘を吐く。

 偽りで満たされた世界はほら、
 こんなにも生きやすくて。

 正直者は馬鹿を見るんだ。
 真面目に生きるなんて無駄なんだ。
 世界が間違っているのなら、
 正しく生きても損ばかり。

  ◇

 勇者アイツを見ていると、苛々する。
 どうしてそこまで“正しい”を追い求める?
 間違っているものの方が多いのに。
 君もやがて、僕みたいに損をするよ?

「……言っても無駄だろうけど、ね」


 昔の僕は、君みたいに、“正しい”を信じてた。
 だけど裏切られたから、
 正しく在ることをやめたんだ。

 この島は、僕には眩し過ぎる。

「……本当、馬鹿ばっかりだよ」