Eno.326 彼波守の日記

嵐に御形

嵐の日。

ルクスくん……
いや、いまはルクス、と私は彼を呼んでいるのだけれど。
彼の様子がおかしかったから、いろいろと話をしたんだ。

嵐の日にまつわる心の傷。
普段余裕たっぷりにふるまう彼のあのような姿ははじめて見た。
……よっぽど、無理をしていたのだと思う。
話を聞いていた私ですら心が痛かったからね。
彼が、少しでも安心できるようになっていてくれると嬉しい。

しかし、「おかあさん」と呼ばれることになるとは。
なんとも不思議な気分だ。
私、カムイのやつみたいに「おとうさん」になることすらないと思っていたから。

母親……知識でしか知らないな。
私にもし父母がいたとしたら、どんな人物だったのだろう。
年若い、剣士である後輩の剣の師であった
シオドア老師のような、厳格な人物だったんだろうか……。
それとも、あの画廊に居る私の友人、ユリナくんのように
無邪気にも優しき人物だったのだろうか。

考えても、いま答えは出そうにないや。
いまは、この島でのことを考えよう。