樋熊は夢と希望を抱きしめた。
ヒグマルは群れで暮らす魔族だ。
野山を駆ける獣を狩って捌いて、生でそのまま食う食生活をしている。
穴倉に巣をつくり、ぐーたらねて起きてまた出かけて好き勝手に生きている。
平和的で温厚な者で、ぷにぷにした肌触りで背も小さい。
けれど力持ちなことが自慢で、打たれ強くへこたれないのがヒグマルだ。
自然を尊び自然と共に暮らす。
牧歌的に生きる樋熊の魔族・ヒグマルはそういう者で溢れている。
――そうした者たちが多い中で、少し特異なヒグマルがいた。
体が丈夫なだけのヒグマルの癖に、獣の骨を削って作った針を持っていた。
そう、針仕事が得意なヒグマルだった。
彼女はほつれた服を縫って、かわいいアップリケをつけて、着古した布を再利用する『お仕事』をしていた。
少し変わったヒルマルだったものの、他のヒグマル達は奇異よりも好奇の眼をして、彼女を器用なんだなと褒めていた。
ヒグマルはヒグマル達だけで面白おかしく過ごしていても良いと思っていた。実際この特異なヒグマルとてそうだった。
元々好きだった針仕事だけしていればいいのだと思っていた。
遠くから見ていただけのことだった。
何か劇的な出会いがあったとか、そういうのではなくて。
魔王という存在を一目見てみようと誘われたのは何が切欠だったか。
何でも同じ魔族が一堂に集まろうとしていると知ったのが始まりだった。
魔王城に集まる者たちの中に、ぽつねんと一緒に紛れ込む。
ともあれば迷子と思われそうなくらいに自分は小さな存在だったけど。
そこで彼女は『その方』を見た。
今思えば、それは憧憬というか……田舎娘が麗しの御方を見てびっくりした衝動だったかもしれない。
感覚としては一目惚れに近しいものだったのかもしれない。
それから彼女は『その方』のためになることを考えた。何かできないか無い知恵を絞った。
ぬいぐるみを作る。
衣服の布を献上する。
飯の材料を獲って来る。
一通り思いついたことをまとめてから、まずは針仕事の練習を重ねた。
やがてちゃんとした服を作れるようになり、身だしなみに気を付けて、言葉もきちんと覚えて。(すごく訛ってるけど!)
魔王城へ向かうヒグマルの『使者』として遜色ないレベルにまで自分を高めたヒグマルがいた。
ヒグマルにしては随分と綺麗なおべべを着て、自作のぬいぐるみで飾りつけて、ヒグマルの思う理想を身に纏って城へ再び足を踏み入れた。
Eno.517:樋熊は樋熊は夢と希望を抱きしめた。
野山を駆ける獣を狩って捌いて、生でそのまま食う食生活をしている。
穴倉に巣をつくり、ぐーたらねて起きてまた出かけて好き勝手に生きている。
平和的で温厚な者で、ぷにぷにした肌触りで背も小さい。
けれど力持ちなことが自慢で、打たれ強くへこたれないのがヒグマルだ。
自然を尊び自然と共に暮らす。
牧歌的に生きる樋熊の魔族・ヒグマルはそういう者で溢れている。
――そうした者たちが多い中で、少し特異なヒグマルがいた。
体が丈夫なだけのヒグマルの癖に、獣の骨を削って作った針を持っていた。
そう、針仕事が得意なヒグマルだった。
彼女はほつれた服を縫って、かわいいアップリケをつけて、着古した布を再利用する『お仕事』をしていた。
少し変わったヒルマルだったものの、他のヒグマル達は奇異よりも好奇の眼をして、彼女を器用なんだなと褒めていた。
ヒグマルはヒグマル達だけで面白おかしく過ごしていても良いと思っていた。実際この特異なヒグマルとてそうだった。
元々好きだった針仕事だけしていればいいのだと思っていた。
遠くから見ていただけのことだった。
何か劇的な出会いがあったとか、そういうのではなくて。
魔王という存在を一目見てみようと誘われたのは何が切欠だったか。
何でも同じ魔族が一堂に集まろうとしていると知ったのが始まりだった。
魔王城に集まる者たちの中に、ぽつねんと一緒に紛れ込む。
ともあれば迷子と思われそうなくらいに自分は小さな存在だったけど。
そこで彼女は『その方』を見た。
今思えば、それは憧憬というか……田舎娘が麗しの御方を見てびっくりした衝動だったかもしれない。
感覚としては一目惚れに近しいものだったのかもしれない。
それから彼女は『その方』のためになることを考えた。何かできないか無い知恵を絞った。
ぬいぐるみを作る。
衣服の布を献上する。
飯の材料を獲って来る。
一通り思いついたことをまとめてから、まずは針仕事の練習を重ねた。
やがてちゃんとした服を作れるようになり、身だしなみに気を付けて、言葉もきちんと覚えて。(すごく訛ってるけど!)
魔王城へ向かうヒグマルの『使者』として遜色ないレベルにまで自分を高めたヒグマルがいた。
ヒグマルにしては随分と綺麗なおべべを着て、自作のぬいぐるみで飾りつけて、ヒグマルの思う理想を身に纏って城へ再び足を踏み入れた。
Eno.517:樋熊は樋熊は夢と希望を抱きしめた。