Eno.533 毒使いの日記

害毒の怪物

 毒がある。
 それを脅威と見るのは生命としてごく自然な防衛反応である。
 しかしながら、毒を抱えて生きねばならなかった。それは、彼等にとっては荷物ではなく身を守る有益な武器だった。
 しかし、害あるものを歓迎する方が奇特と言えた。
 人間にも、魔族にもその有害性を危惧されることは珍しくなく、元来の蠍には敵が多かった。

 それでも魔族の中に蠍達の居場所があるのは、魔を統べる絶対的な王者の存在があってこそだ。
 強者に潰されることもなく、蠍であれ排斥されずに生きることを許されている。
 新たな知恵を授かる機会も得られた。
 徐々に一族のなかで、毒を薬とする術が伝えられた。

***

 ピオニーは、蛇蝎の端くれとして嫌われることには慣れていた。
 けれど、一度手に入れたものを手放すことには慣れていなかった。
 今ある居場所にしがみつく為なら、前を往く王者にどこまでも付き従う。

 あとピオニーは、有給消化がまともにできる日々を取り戻したい。