Eno.691 明日の分霊の日記

わすれもの



鐘の音が聞こえる。今日の幕が上がる。
ふかふかのベットの中でゆるゆると目を覚ました。ぼんやりとした意識の奥にある、規則正しい呼吸に耳を傾ける。
吸って、吐く。穏やかな命の音。
紫の髪、ネオンの瞳と、アメジストの義眼。大好きな貴方。

もう少し眺めていたいけど、朝ごはんを作らなきゃ。
起こさないようにそうっと布団を抜け出して、椅子に掛けてあった下着とズボンを履く。上着は……いいや、めんどくさい。

廊下に出て右、真っ直ぐ突き当たり。
広々としたキッチンに立って、掛けてあったエプロンをつける。フリルとストライプが可愛いモノクロのエプロン。
やっぱり可愛いものは身につけるだけでエネルギーを貰えるよね。

ウキウキのままケトルに水を入れてスイッチオン。
戸棚からオートミールとレーションを…………今日はなんだか気分がいいから豪勢にしよう。
取り出したものをそのまま戻して、代わりに四枚切りのパンを取り出す。トースターに4枚入れたら、次は具材。卵を溶いて、白だし、マヨネーズ、牛乳……小さく切ったベーコンなんかも入れちゃえ。あっ全然小さくないかも……大は小を兼ねると言うしいっか。
ちゃっとスクランブルにして、ひと口味見。もう少し濃い方が好きかな。いっしよに挟む葉物……葉物……あっ無い、後で買ってこなきゃ。
仕方ない、サラダ用のキャベツを使おう。
そうしてるうちにトースターがチン!と音を立ててパンを仕立て終える。うん、いい夕焼け色!
熱々のパンの側面を丁寧に切り込んで開いたら、中にサラダとスクランブルエッグを詰め込む。ぎゅっと。
……ぎゅっとしてたら、四つのうち三つで卵が終わっちゃった。余ったパンには昨日の余り物のポテトサラダを入れちゃえ。……あっ大ありかも。
出来たら全部を四等分に分けて、お皿に載せる。

沸かしたお湯でコーンスープも作る。
余ったキャベツにラスクを乗っければもう完璧なサラダ。ボクはシーザードレッシングが好き。あったっけ?お、あったあった。かけちゃえ。

出来上がったモーニングセットをミニテーブルに乗っけて、廊下を戻る。

「はーいせんせい!おはようだよ〜🎶」
「……………んにゃむ」
「起きてるでしょ〜?朝ごはんできてるよ!」
「……………随分といいにおい……随分豪勢だね……何かあったっけ?」
「凝ったものは流石に作れてないけどね。ただなんか、いいこと起こせそうないい気分だったから❣️」
「そうかい。」

そうなの。そんななんとなくの気分を、あなたと共有したかったの!
ふわふわと微笑みながら食べるご飯はほんとに美味しくって。気に入った時は左の眉毛を上げて人差し指を下唇に押し当てる仕草がチャーミングで、欠伸をしながらコーンスープを両手に抱える背中がキュートで。



「ありがとう、オルド。」





​───────ああ、嗚呼!幸せ‼️

あなたに尽くし、あなたに返される。
優しくって嬉しくって、幸せな、青い春の。


もうどこにもない、まぼろし。