Eno.739 ツツユビの日記

鳥の記録

イェソドという 記録番がいました
それは色んな姿に形を変えては 生命の記録を残していました


ある日イェソドは ある小さな村の記録を残そうと決めます
さっそく村近くの森に降り立ち 人間の男の姿になりました
その方が間近で記録できると 考えたからです

しかし人間の身体は 脆く柔いもの
大きな獣に襲われ 大怪我をしてしまいました
困り果てた時 一人の少女に出会いました


少女に助けられたイェソドは しばらく村で過ごすことになりました
よそ者の男にも 村人達は優しくしてくれました
イェソドは生まれて初めて 人の温かさに触れました

とても居心地が良かったのでしょう
記録を残しつつ 村の住人として暮らすようになりました


──時が経つにつれて 村の人口は減少します
ついには イェソドと少女だけになりました
少女も大きくなり女性に やがて老婆になりました
イェソドは老婆の最期を 村の終わりを見届けました

長年の交流で 人の心が芽生えたイェソドは
深い悲しみに暮れました 記録を残すのもやめました


──これじゃ使い物にならない そう考えた生命の樹は
イェソドから 村の記録を奪いました
奪われていく記録を 必死に取り戻そうと
イェソドは手を伸ばしましたが

ほとんどの記録を 失ってしまいました


唯一 手元に残ったものは 少女の姿と名前だけ
この少女は何者か どこで会ったのか
記録を奪われたイェソドには 何も分かりません

だけど何か 大事なものを失った気がしました
これらだけは 忘れてはいけない気がしました


その日を堺に イェソドは少女の姿になりました
いつしか 本当の名を隠して
ツツユビ少女の名前と名乗るようになりましたとさ