12.無題
汽笛の音が聞こえる。
今までは 思考が纏まらず 割愛していたが。
浜にふたりで ただ座っていた時に 聞いたのだ。
トトは あの音を耳にしてから 落ち着かない様子だった。いつものトトならば フン。くだら〜ん★プイプイ〜(小煩い子ネズミちゃん) などと宣って 自力で脱出するための 船を作ろうと提案するに 違いないのだ。
ちょっと おかしいぞ お前。
いいや。お前は精々 そう思っているがいいさ。何故なら どうにもならなくなった時には 俺たちが全てどうにかして 差し上げる♪
フ。俺たちでは どうにもならないのだが。
今の俺たちは ただの人間ちゃんに過ぎない。大逆転的な脱出においては 役に立たないのだ。まあ なんでもいいが。どちらにせよ 俺たちは。そんな細い糸には 手を伸ばすことは出来ない……いいえ。手を伸ばすことは できる。
正確には 体重を掛けることが できない。
あの燦然と輝く 灯台の光は 向こうの海路まで 届くこともあろう。だが 光が届いたとて それは 有るもの でしかない。我々の状態を悟って頂け かつ それによる助けが来るかは また別の話である。
この島で 我々が 最初に読んだ文字。
瓶の中に入ったあの便箋。あれに拠れば 船は 七日に一度 この島の傍を通ることがある とのこと。ことがある?では 通らなかった場合 その糸に掴まっていた 俺たちは どうなるのか?
………まあ いい。これは 愚かな考えだ。
厭な事ばかり 反芻して考えるのは 俺たちの悪癖である。思考には 有用なものと そうでないものがある。そうでないものは 紙のように破いて 誰にも届かぬように 海へ流す他ない。希望に向かって歩く 人間ちゃんの 脚を掴んで引っ張ること程 愚かなことは無い。全員 俺たちの考え付くようなことは 考え付いているはず。だが 態々誰も言わない。
口に出してしまえば 士気を下げるから。
この島に居る生物ちゃんたちは 皆 目的へ向かって歩いているのに 俺たちは 意識せず 彼らの脚を握ろうとした。それをしてしまえば あの国の人間たちと 代わりがないのだ と思えば 総毛立つ思いだ。口や態度には 気を遣わねばならない。
我が国の中央区は 光と 熱に満ちている。
偽りの光と 悪意の熱だ。
自分たちより優れた “異端者” を 轟轟と追い立て燃やし尽くす 野心の焔である。大半の人間たちは この国という木の蜜を 死ぬまで啜り尽くすことしか 考えていない。自分の手元に 金が入ってくればいい。
まるで虫の巣。
女王へ蜜を運ぶ 虫の巣である。
数百年に渡り 汚染された政治は 未だ改革が困難故。
この真っ直ぐに 島の宵闇を照らすひとつの灯台の光に較べるならば ひときわ強く輝く 宮殿を囲むように 中央区へ並べられた あの夥しい光の群れは 希望と見せ掛けた 虫けら共による 保身の塊に他ない。
ヤルダバオートは 光を嫌う代わり 闇の中では無敵の性能を誇る。場を選ばねば 俺たちですら 手も足も出ぬ性能を。光り輝く中央区は ある程度 被害を免れるであろうが。夜は一片の光も灯らない スラム街に住む者は。一帯を照らすほど 過剰なランプを灯す富のない 貧困層は。果たして 闇への恐れを 如何して耐えているのだろう。
何もかも 勘定に入れるのが 正しいことでは無い。
明日の無事を信じる 美徳があるならば。
俺たちも それにお力添えしよう。
今までは 思考が纏まらず 割愛していたが。
浜にふたりで ただ座っていた時に 聞いたのだ。
トトは あの音を耳にしてから 落ち着かない様子だった。いつものトトならば フン。くだら〜ん★プイプイ〜(小煩い子ネズミちゃん) などと宣って 自力で脱出するための 船を作ろうと提案するに 違いないのだ。
ちょっと おかしいぞ お前。
いいや。お前は精々 そう思っているがいいさ。何故なら どうにもならなくなった時には 俺たちが全てどうにかして 差し上げる♪
フ。俺たちでは どうにもならないのだが。
今の俺たちは ただの人間ちゃんに過ぎない。大逆転的な脱出においては 役に立たないのだ。まあ なんでもいいが。どちらにせよ 俺たちは。そんな細い糸には 手を伸ばすことは出来ない……いいえ。手を伸ばすことは できる。
正確には 体重を掛けることが できない。
あの燦然と輝く 灯台の光は 向こうの海路まで 届くこともあろう。だが 光が届いたとて それは 有るもの でしかない。我々の状態を悟って頂け かつ それによる助けが来るかは また別の話である。
この島で 我々が 最初に読んだ文字。
瓶の中に入ったあの便箋。あれに拠れば 船は 七日に一度 この島の傍を通ることがある とのこと。ことがある?では 通らなかった場合 その糸に掴まっていた 俺たちは どうなるのか?
………まあ いい。これは 愚かな考えだ。
厭な事ばかり 反芻して考えるのは 俺たちの悪癖である。思考には 有用なものと そうでないものがある。そうでないものは 紙のように破いて 誰にも届かぬように 海へ流す他ない。希望に向かって歩く 人間ちゃんの 脚を掴んで引っ張ること程 愚かなことは無い。全員 俺たちの考え付くようなことは 考え付いているはず。だが 態々誰も言わない。
口に出してしまえば 士気を下げるから。
この島に居る生物ちゃんたちは 皆 目的へ向かって歩いているのに 俺たちは 意識せず 彼らの脚を握ろうとした。それをしてしまえば あの国の人間たちと 代わりがないのだ と思えば 総毛立つ思いだ。口や態度には 気を遣わねばならない。
我が国の中央区は 光と 熱に満ちている。
偽りの光と 悪意の熱だ。
自分たちより優れた “異端者” を 轟轟と追い立て燃やし尽くす 野心の焔である。大半の人間たちは この国という木の蜜を 死ぬまで啜り尽くすことしか 考えていない。自分の手元に 金が入ってくればいい。
まるで虫の巣。
女王へ蜜を運ぶ 虫の巣である。
数百年に渡り 汚染された政治は 未だ改革が困難故。
この真っ直ぐに 島の宵闇を照らすひとつの灯台の光に較べるならば ひときわ強く輝く 宮殿を囲むように 中央区へ並べられた あの夥しい光の群れは 希望と見せ掛けた 虫けら共による 保身の塊に他ない。
ヤルダバオートは 光を嫌う代わり 闇の中では無敵の性能を誇る。場を選ばねば 俺たちですら 手も足も出ぬ性能を。光り輝く中央区は ある程度 被害を免れるであろうが。夜は一片の光も灯らない スラム街に住む者は。一帯を照らすほど 過剰なランプを灯す富のない 貧困層は。果たして 闇への恐れを 如何して耐えているのだろう。
何もかも 勘定に入れるのが 正しいことでは無い。
明日の無事を信じる 美徳があるならば。
俺たちも それにお力添えしよう。