Eno.241 平木 夕真の日記

┗━Occam and Theseus'

「テセウス&オッカムの方でいいんだな?」
12月の頭の日曜日、パパがクリスマスプレゼントの予約をしようとしている。

9月の終わりに一度、日常が崩れかけたユマの家庭。
"わたし"が親子喧嘩して回収に失敗した事で、曲がりなりにも日常は帰ってきた。
ユマとの同期はきちんとやったから、記憶も振舞いも齟齬は無いはずだ。
中身が宇宙から来た家出少女とは、"パパ"も"ママ"も疑ってはいないだろう。


『うん、そっちがいいな。紛らわしいけど間違えないでね。』
最上級のSGではなく、上から2番目のグレードのテセウス&オッカムを指さす。
9800JPY。小学生へのクリスマスプレゼントとしてはこちらが適切と判断した。

「なんか最近はオッカムの方をよく見てる気がするんだけどな。」

────パパ、よく見ている。

ユマの記憶をたどった所、ユマは1クール目のテセウス編の方がお気に入りで
2クール目のオッカム編はあまり気合いを入れて見ている感じは無かった。
"わたし"はオッカムの考え方が好みだ。

『えー、そうかな?
 と言うか、こんな話すると余計に紛らわしくなるよ?こっちだからねー。』

はぐらかして、その場を離れた。
ユマが生きてアヒルバトラーTwinを見続けた場合、オッカムの好感度がテセウスを追い抜く可能性はかなり低いと思ったからこっちをねだったのだが、改めてボロが出ていないか気を付ける必要がありそうだ。

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クリスマス当日
『パパ、これSG……!!?』

SGテセウス&オッカムの大きな箱。
中に入っているのはアヒルさんなのだが、最上級となると立派な箱に入って来る。

「夕真、いい子にしてたからな。
 それに、いい物、お気に入りの物って言うのはギリギリの所で勝ちを手繰り寄せてくれるし、
 ギリギリの所で命を繋ぎとめてくれるかも知れない。
 それに持ってるってだけで、なんか元気出て来るようなもの、あるだろ?。」
滑落事故、水筒に入っていたお茶が無事だったのが生存の決め手、と言う事になっている。
娘の生還祝い、と言う事でもあるのだろう。

『……ありがとう、嬉しいよ。
 早速使ってみるね。』

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その日の深夜、通信端末を開き、私の回収の事で話をした。

『強引に回収するには、まだ今回の事が記憶に新しすぎるよ。
 こっちのパパもママもいい人だから。』
回収を数年後にする決定に、同意した。
実の母は、どんな顔をしていただろうか。