妖精回帰:ニンゲン
そいつに出会ってからというもの、本当に未知の連続だった。
こいつを育てていたのはオイボレのゴブリン種。
シャーマンだったのが運命を分けたと言っても過言ではない。
まず、言葉が通じない。視線の先、ブルブルの指の方向、天気の加減と完全な野生。
当然ツルツルのニンゲンは痩せてて、弱い。3食おやつ昼寝付きの生活なんて夢のまた夢。
「だーかーらーーー⋯!!
拾い食いするな!それは食べ物じゃないの!」
⋯もぐもぐ。
「待て今なに食った。ぺっしろ!こら!!
か、かっったつよ⋯テメ⋯!!わー!!ごくんじゃないバカバカバカバカ!!」
幸い、こいつの相棒⋯?のシャーマンは大人しかった。ゴブリンなんてみんな
バカ騒ぎと略奪と肉にしか興味がないと思っていたけれど、ぼくみたいなものだと思えば
不思議と嫌悪感は湧いてこずいつしかぼくはこいつらと『対話』を求めていた。
「なんで骨をまとめてるのか?売ってカネにするんだ。
この辺りのは珍しいし、欲しいってやつはちょいちょいいる。」
「ぼくはいいから、お前はちゃんとしたものを食え。
いつまでも虫をかじるのはやめろ。火を入れてもダメ!」
「マメと肉を煮てみたぞ。ダメ、好き嫌いするなバランス考えてるの!
⋯何クッキー食べたい?ちゃんと全部食べたらね。」
それが楽しかったのかは、わからない。そもそも『言葉』が通じないし、
それを必要だと思ってないみたいだった。ただ、目を離したらいけないと思った。
こいつが弱いからだったかもしれないし、ぼくの王様が強すぎたのかもしれない。
いつしか、ぼくは死にたくないと考えていた。
⋯次あった時、こいつが死んでいたらどうしよう。泣いていたら?腹を空かせていたら?
ケガをしていたら、ねむれなかったら、死にかけていたら。
時間が許す限り、今まで惰性で過ごしていた分を取り戻すみたいにぼくは勉強した。
こいつらが生きるには金がいるし、教養、知性、何より友達だって必要だ。
オイボレのシャーマンを説得しながら、クニでこそこそ金を稼いで貯めて、
食べ物や器具、装備、おむつ、衣服。色々買って計算して、日誌をつけた。
⋯⋯たりない。たりない、ぜんぜん足りない!
3年なんてあっという間だった。死にたくない。絶対に、今じゃない!!
けれど、ニンゲンを育てるのにハマっているなんて報告はできない。
なんとかあいつを上手く隠しながら、力をつけて生きていけるまで、あるいは見逃してもらえるよう⋯⋯
「⋯⋯という、わけなんだ。興味あるだろう?」
「ま、まあ待ちなよ。別に肩入れしようってわけじゃない。
すぐに死んだらつまんないじゃないか。これは賭けだよ王様。」
「⋯ぼくが手塩にかけて極上の勇者を持ってくる。
ぼくのダストは結構万能ってキミも知ってるじゃないか。
回復、バフ、デバフ、味付けにポーション作り⋯⋯」
「⋯⋯だから、ぼくに寿命を分けてくれないか。
必ずキミ好みにするって、約束する。」
「まかせてよ。ぼくを誰だと思ってるのさ。
ぼくはキミの隠し刀。今度はちょおっと、長い目で情報が必要なんだ。」
たとえ、王様の信用を損失しても構わない。
あいつが大きく育って、オイボレみたいに立派に長生きしてくれれば。
「王様。ぼくはキミと一緒に死ねるけど⋯⋯」
「あいつとは死ねない。キミこそぼくの全てだよ。」
親友にウソを吐いてでも、ぼくはあいつを守りたかった。