Eno.36 巳々 琉海の日記

神父エンドの説

 
……
あァ? 「結局『教皇庁指定異能』って何なのさ」だ?
こッ……れだから話も聞かねェ阿保は……
毎回反省反省つって学んだ覚えにャ無いが?
聞け。

教皇庁指定異能を悪魔Daemonだと公的に称さねェ理由だが、
単に他文化、カトリック圏外に対する配慮だ。主は全てで在られるが、私達は違う。
飽くまでこの世に有る、私達われわれの主観でしかねェ――ッつう教皇庁直々の建前という訳だ。
それに、逐一悪魔がどうだとか言っちャあ、そこに値も類もしねェ怪異や妖精と混ざっちまって面倒ォな事になンだろ。

縄張りの問題でもあるな。異なる宗教圏で獲物を取り合わねェための措置ラベル……まァ、悪く言ってレッテルッて所か。

……はァ。お堅い話じゃなくって?
そもそもの話をしろってか。

そォは言われても分かんねェ物は分からない。
そういうなんか――としか、教皇庁が発足してこの方分かっちゃあねェ。
おい。……おい、話ァ最後まで聞け。
あと三位一体は私も分からん。
父と子と聖霊の三格まとめて一体って覚えときャ良い。

………
……

で、簡潔にまとめるとこうだ。
①、発生起原は不明、それ自体が独立して活動する異能
②、これらは知性体に寄生して膨張し、繰り返し渡り歩くことによって際限なく肥大する
③、非指定とは異なり、顕在化した時点でキャリアの意識・主導権が完全に逆転し、異能が主体となる
④、キャリアから切除した時点では完了せず、個々持つ像が外界に結ばれ、異能実体との決戦を要する

非指定――自らの異能に呑まれ、心身の制御権を喪失した非術師――蔑称として言われる悪魔とは別物だ。
な物で、連中は異能の体のみを取った起源不明でしかねェ。
たまたま、世界観が基督コッチに合致した……させただけのな。

指定ネームドと較べりャあ非指定が楽に見えンのは否定出来んが……
御前な。半人前が言うべきでもねェこった。

連中が顕在化するにあたっての決まり事は統一されちゃない、
便宜上でも異能である以上は個々が独立種と言い換えても遜色ねェ顕現、
故に根絶儘ならず……ッて寸法だ。余りに特徴的なルール以外、未だ同定されてねェ奴も少なかない。

王道は一定の決まり事の達成または違反、この次にキャリアの異能使用に伴う浸食・定着が来ッか?
時にャあキャリア自身が自己放棄を行いそのまま……って奴と、逆に周囲すら判別のつかねェレベルで成り替わンのも。
最低なのは、気分次第の阿保。
最悪は、加えて毎度毎度ルールを変更する、実質的な条件持たず――『<rt>Flauros</rt>フラウロス<rb></rb>』が有名だな。

基本的には……飽くまで、基本的な話だが、所以が古いほどルール無用、近代に移るほど制定されてる。
決まり事こそ同定されてねェが、如何なる異能が、如何なる人間の下に顕れるか。
その傾向だけはハッキリしている。連中は人を観ている、という事だ。

逆に、来ねェ人間も決まってる。簡単だ、既に異能を保有している……まァ、私達のような術師全般。
と言うのも、単純にキャパシティオーバーで入ンねェ。人間の側がそういう風に出来てねェ。
異能と云い、呼ばれ、遣われる力は即ち、その人間に伴った第二の精神。省みるべき姿。
既に現実に重なる自己の世界ポジションを確立した者にャあ入り込む余地が無い。
独立活動を成す、外的価値観である悪魔の第三は用ォ無し。
連中としても術師は願い下げって奴だろォな。

……はァ。肝心の、指定異能の連中が名前通りの悪魔なのか、だァ?
実態としちャあ、さっき挙げた特徴を持つそれらしい異能に、それらしい呼称を押し付けてるだけだなァ……
あァでも、極々稀な例だが。与えるまでもなく、自分から堂々と名乗る不届きな奴だって居るにャあ居るぞ。
Asmodayアスモダイ』だ。奴には依代すら無い。顕れる国々に合わせた美丈夫の形を取るたァ有名な話っちゃあそォか。
自前で名乗る連中は決まって創世記、それ以前が所以……指定異能とはまた一段と違う存在とか言うがなァ……。


……

ンだ藪から棒に。
「遇ったことある? 教皇庁指定異能」……そうだな。
ある。「闘ったことは」、それもある。「何人体制」、……私は単独だ。

「倒した?」――……言わせるな、皆殺しだ。殺した。

御前達は不殺だろうが、私はそうじゃない。
そういう時もある――で済まされちゃねェ事だって識ッてる。
けど、疾っくに壊し過ぎて戻れない、祓った所で救われねェ人間もある。
本人の為だ。……贖う誰かは必ず要る。被憑者も、私達も、誰かが籤を取らなきャ――ぁ?

「だからなれなかったんじゃねえの、」

そうだな。
そォだな……

私は祓魔師になれない。
なれなかったザマがこれだ。

私は呪術師だ。第八圏マーレボルジェに落ちる。第四の嚢にまっさかさまに。


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………
……


約14体との関係はより良好。
特段、件の二人組と接触する機会多シ。
労働者、および工作者のは非常に都合の好い。

また、水汲み、倉庫管理の子供等々……
この皮は非常に都合ニーズに合う。

漂着より四日が経過。
心身は不調無シ、関係に滞り無シ。
引き続き、我が身の保全に努める。