7:フィルのおもい
「……き、て……」
誰かの声が、エルディスに降る。
「うう……」
「……きて」
ぼんやりとする意識が浮上して、あいまいな視界が開く。
青い髪の少女が、必死に声をかけ揺らしていた。……フィルだ。
「フィ……ル……?」
「!……起きたのね」
フィルは揺らしていた手を止めると、咳払いをした。
ゆっくり体を起こし周囲を見渡す。どうも、洞窟か何かのように見える場所だった。
嫌な湿気が立ち込めていて、薄暗い。若干光があるのは、そのあたりに転がる石――――魔法石がほのかな光を放っているからだ。
「ここは……?というか、僕、何が……」
「覚えてる限りの話になるわ。あのね……」
曰く。
扉を開けた瞬間、目の前に待ち構えていた魔物に襲われ、地下に叩き落されたらしい。
ちょうど見送ろうと近くにいたフィルも巻き込まれる形で。そして先に目を覚ましていたらしい。
「魔物は?」
「落ちてきたところが塞がったみたいで、追ってきてはいないわ。けど……」
「?」
言い渋るフィルに、エルディスは?を浮かべる。
「……とりあえず、移動しましょ。何かないか探しながら、話すわ」
「……魔女、というか、フィル、という少女がいるのですじゃ」
彼女はもともと村の一員だった。素直な子ではなかったが、優しい子だったそうだ。
彼女は大きな魔力を持っていたが、真面目に魔法の勉強をする様子を、村の皆で優しく見守っていた。
けども、ある時「牙将」がきた。その配下の牛の獣人のような魔物が言った。
『この中に魔力の高い子供はいるか、差し出せ』と。
そして、フィルを守るために彼女の両親が犠牲になった。両親は、村の結界を創っていた魔法使いだった。
「……あの子は、自分のせいで森や村がこうなったを思い込んでおるのじゃ。だが、魔物が来るたびこっそり撃退しているのも知っておる。……間に合わないことも、多くありますがな」
「……」
「今回もおりました。けど、あの子はワシらが近づくと逃げてしまいます。未だ罪悪感に苛まれているのでしょう。」
洞窟はほとんど一本道だ。幾らか脇道のようなものもあるが、狭すぎて通れない。通れても小型の魔物やネズミ程度のものだろう。
「……あの魔物、アタシを狙って村に来た魔物なの。お父さんたちを殺した奴なの。だから」
仇をとりたい。けど。
「牙将ナーグルがいる、ってことだね」
牙将ナーグル。近接戦を得意とする狼の獣人、らしい。
フィルは魔法使い。近接は得意ではないし、接近戦用の魔法も得意ではない。
「……ええ。あたしのせいで、みんな、迷惑してるわ。だから……」
「……わかった!じゃあ、僕達も協力するよ!」
「えっ?」
フィルは首をかしげる。何を言っているのかわからなかったのかもしれない。
「僕とディータが、協力するよ。」
「あなたはともかく、ディータ……って、あの金髪の剣士でしょ?勝手に決めてもいいの?それ」
「大丈夫。ディータも頷くよ」
どちらにせよ、牙将は倒さなきゃならないしね、と。
蒼空色の瞳は、少女の炎色の眼を迷いなく射抜いていた。
フィルはふい、とそっぽを向くと、歩きを再開した。
「……まず、ここから出るわよ。話は、それから」
ぱ、とエルディスは笑顔になる。その笑顔に向けなかった顔は、きっと赤かったのかもしれない。
「そうだね。けど、どうやって出よう……」
「……こうするわ」
そう言ったフィルの手には、いつの間にか赤い杖が握られていた。赤色の上に、青い炎の灯る長杖を。
え、とエルディスが見たときには、すでに魔力が炎の上に集まっていた。
「えっ」
「伏せときなさい。イフリートフレア!」
――――その日、大森林では巨大な火柱と土煙が観測できたのだった。
誰かの声が、エルディスに降る。
「うう……」
「……きて」
ぼんやりとする意識が浮上して、あいまいな視界が開く。
青い髪の少女が、必死に声をかけ揺らしていた。……フィルだ。
「フィ……ル……?」
「!……起きたのね」
フィルは揺らしていた手を止めると、咳払いをした。
ゆっくり体を起こし周囲を見渡す。どうも、洞窟か何かのように見える場所だった。
嫌な湿気が立ち込めていて、薄暗い。若干光があるのは、そのあたりに転がる石――――魔法石がほのかな光を放っているからだ。
「ここは……?というか、僕、何が……」
「覚えてる限りの話になるわ。あのね……」
曰く。
扉を開けた瞬間、目の前に待ち構えていた魔物に襲われ、地下に叩き落されたらしい。
ちょうど見送ろうと近くにいたフィルも巻き込まれる形で。そして先に目を覚ましていたらしい。
「魔物は?」
「落ちてきたところが塞がったみたいで、追ってきてはいないわ。けど……」
「?」
言い渋るフィルに、エルディスは?を浮かべる。
「……とりあえず、移動しましょ。何かないか探しながら、話すわ」
「……魔女、というか、フィル、という少女がいるのですじゃ」
彼女はもともと村の一員だった。素直な子ではなかったが、優しい子だったそうだ。
彼女は大きな魔力を持っていたが、真面目に魔法の勉強をする様子を、村の皆で優しく見守っていた。
けども、ある時「牙将」がきた。その配下の牛の獣人のような魔物が言った。
『この中に魔力の高い子供はいるか、差し出せ』と。
そして、フィルを守るために彼女の両親が犠牲になった。両親は、村の結界を創っていた魔法使いだった。
「……あの子は、自分のせいで森や村がこうなったを思い込んでおるのじゃ。だが、魔物が来るたびこっそり撃退しているのも知っておる。……間に合わないことも、多くありますがな」
「……」
「今回もおりました。けど、あの子はワシらが近づくと逃げてしまいます。未だ罪悪感に苛まれているのでしょう。」
洞窟はほとんど一本道だ。幾らか脇道のようなものもあるが、狭すぎて通れない。通れても小型の魔物やネズミ程度のものだろう。
「……あの魔物、アタシを狙って村に来た魔物なの。お父さんたちを殺した奴なの。だから」
仇をとりたい。けど。
「牙将ナーグルがいる、ってことだね」
牙将ナーグル。近接戦を得意とする狼の獣人、らしい。
フィルは魔法使い。近接は得意ではないし、接近戦用の魔法も得意ではない。
「……ええ。あたしのせいで、みんな、迷惑してるわ。だから……」
「……わかった!じゃあ、僕達も協力するよ!」
「えっ?」
フィルは首をかしげる。何を言っているのかわからなかったのかもしれない。
「僕とディータが、協力するよ。」
「あなたはともかく、ディータ……って、あの金髪の剣士でしょ?勝手に決めてもいいの?それ」
「大丈夫。ディータも頷くよ」
どちらにせよ、牙将は倒さなきゃならないしね、と。
蒼空色の瞳は、少女の炎色の眼を迷いなく射抜いていた。
フィルはふい、とそっぽを向くと、歩きを再開した。
「……まず、ここから出るわよ。話は、それから」
ぱ、とエルディスは笑顔になる。その笑顔に向けなかった顔は、きっと赤かったのかもしれない。
「そうだね。けど、どうやって出よう……」
「……こうするわ」
そう言ったフィルの手には、いつの間にか赤い杖が握られていた。赤色の上に、青い炎の灯る長杖を。
え、とエルディスが見たときには、すでに魔力が炎の上に集まっていた。
「えっ」
「伏せときなさい。イフリートフレア!」
――――その日、大森林では巨大な火柱と土煙が観測できたのだった。