Eno.132 エルディス・エアリアルの日記

8:牙将を討

「い、今の爆発音は?!」
 村。皆が唖然としている。まさか、魔物の……と考えるところに、それは来た。

「ギャッハッハ!ああ――――クソ、こんな場所の癖に手こずらせやがってェ……」
「お、おぬしはぁあ?!」
 村長が腰を抜かし、母親は子を抱きしめる。
 漆黒の毛並みの狼獣人。凶悪な爪と、口から覗く赤い牙。纏う濃厚な瘴気。
 ディータは前に出る。
「……貴様が、牙将ナーグルか」
 その問いに、漆黒の狼獣人は口角を上げた。
「ああ、ああ!そう、そうだ。俺様こそ、魔王軍配下三将軍が一人、ナーグル様よ!」
 舌なめずりをしながら目を細める様子に、下品な印象を受ける。
 しかし、魔物は力を重きに置く傾向がある。将に数えられる実力があるのは確かだろう。
 だが。
「……貴様が三将軍?笑わせてくれるな。ここまで弱そうな魔物、見たことがない」
 ディータは挑発する。この場で一番戦えるのは、自分であるためだ。何より。
「村長殿、村人を連れて早く逃げてください。」
「わ、分かりましたですじゃ……!」
 村人を逃がさなければならない。エルディスが戻るまで、いや、戻る前に倒すべきだ。

 牙将ナーグルは目を見開くと、血管を浮き上がらせながら爪を振りかざし飛び掛かってきた。
 それを抜いた剣でいなしながら蹴りを入れる。
「ぐうぅ?!」
 すると、見事に吹っ飛ぶ。だがすぐ起き上がって、再度飛び掛かる。
「て、テンメェェェェェェ!」
 だが結果変わらず、ディータの剣によっていなされる。さらに再度挑むが、変わらず。
 その様子に、ディータは疑問を抱いた。
(……弱すぎやしないか?)
 凶悪な爪牙やその体躯は、確かに「将」と呼んで差し支えないだろう。けど、それ以上に動きや力の入れ方が単調で幼稚だ。

 すでにかなりぼろぼろになったナーグルは、ぐ、とまた立ち上がった。
「クッッッソがァ!オレ、オレオレ、俺様を、ナ、ナメんじゃねェ!!」
「!」
 ナーグルは息を吸い込む。
 森に、あまりにも大きな咆哮がこだました。




「ウィンドチャイム!」
 風の刃が吹き抜ける。目の前の巨大な牛のような魔物の片耳を傷つけ、荒ぶらせる。
「”炎よ、アタシに従いなさい”……サラマンドレイ!」
 荒ぶる魔物に、蜥蜴のような炎が噛みつき、絡みつく。
 二人は、(無理やり)洞窟を脱出した直後、例の魔物と鉢合わせていた。タイミングは最悪と言ってもいいが、しかし、どちらにせよ討たなければならない。だから戦っていた。
 数分の格闘。エルディスが前に出て気を引きつつ行動し、その隙にフィルが魔法を放つ。
 コンビネーションは良く、 

 牛をたおし

きば将を たお

 し

たお