Eno.132 エルディス・エアリアルの日記

■:×××の手記

――――私が勇者様と出会ったのは、勇者様にとって三つ目の街になるのでしょうか。




 こっそり抜け出して街をはしゃいでいた私に絡んできたならず者から助けて下さったのが出会いです。

 その後、私の専属の護衛を連れ出して、勇者様について行きたいとお願いをしました。


 ええ、旅は、とっても楽しいものでした。


 高慢に見えますが、繊細で責任感の強いディータ様
 一緒にこっそりと甘いものを食べに行った、友達のフィルちゃん
 お堅いですが、時々面白い顔を見せてくれる、護衛のモルト

 そして、誰より優しくて、誰よりも心の強い勇者、エルディス様。



 楽しい旅でした。本当に。



……願うことなら、また、皆で集まって、どこかへ行きたいものです。



 もう、かなうことなどない願いですが……。


…………。



 ああ、どうして、全ては善いものであると信じ切っていたのでしょうか。



 私は今、モルトと共に魔物の隠れ里に隠れ住ませて頂いています。

 空将ミィカ……彼女は、弱く臆病な魔物たちを北の山にかくまって、小さな里として運営していた者です。


 魔物にも善い者がいるように、人間にも悪しき者はいたのです。


 ……。



 私は今、私が知る「彼ら」の冒険譚を綴っています。ミィカちゃんの力も借りながら、ですが。

 彼らの、私たちの旅が埋もれてはなりません。 



 …………。


 私は、ネリス・フルクィルス。
 勇者一行の生命線、回復手を務めていた、元・聖女です。

 今、私は、瘴気汚染により人間と会うことは叶いません。
 人間との交流は、月に一度のフィルちゃんとのお手紙だけです。

 きっと、かつての勇者一行で唯一「喋れて、見聞きできて、意思疎通のできる人間」は私だけでしょう。

 ……この手記を見たあなたが、人間でも、魔族でも構いません。
 どうか、「彼ら」に何があったのか――――それを、知ってほしいのです。



Nelis・Philcrus