真似事をした日
その日は朝から大騒ぎだった。
魔王の側近は発狂し
妖精もすこぶるキレ
四天王があきれ顔で緊急招集され
門のガーゴイル
吸血鬼の送迎デュラハン
魔王城周辺に生息するヒグマルたち
はては遺跡周辺を守護するサソリの娘にまで
その騒ぎは一気に広まった。
もしかして足の速いハーフエルフのせいか?
あの魔王陛下が御結婚されるらしい!

嘘である。
いや、嘘というよりも噂がねじ曲がり湾曲して広まったのだ。
魔王城には様々な種族が出入りし、城下町にはそれこそ生活がある。
魔王は考えていた、『自分に子供がいたら楽しいのだろうか』と。
放浪者、旅人、勇者、そして魔王………と随分長い時を歩んだ彼女の見た目は、細身の少女から変わることなく。美しく愛らしいまま。
歴史を聞くなら魔王様に教えを乞えばいい、と言われるほどには長くエゾデスに存在していた。
そんな、なんでも持っていそうな魔王様にないもの。
それが肉親だった。
ずっとともにいる者達はそれこそ家族同然と思っているが、本来の家族というモノを知らない彼女にとって『血のつながった存在』というのが気になった。
ヒグマル族にもきっと血のつながりはある。
鬼の一族にも親兄弟はある。
下々の者達にもきっと、当たり前にあるかもしれないそれが気になった。
だがそこからが問題だった。
何故か事が大きくなり求婚者が続出。貴族の魔族の謁見、増える花束。
そしてそれらを処理する側近と妖精、何故か求婚者たちの面接をさせられる四天王。城は混沌を極めていた。
結局誰も魔王の前に通されることはなかった。
魔王は言った。
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はよいえや。
魔王は子供がどうできるのかさえよくわかっていないのだ。故に夫のことは考えていなかった、周りの者達はホッとしたような、それはどうなんだ?というような顔をしたことだろう。
ならば子供をどうつくる?
皆知恵を振り絞った。振り絞ると言っても手段は限られている。
養子をとるか、魔法生命として生み出すかだ。
魔王は………後者をとった。
人間の女は腹を痛めて子を産む、というのは本を読んで知っていたのかそれを真似した。
具体的には腹ではないが、体の一部を使い、『子』を造った。
それは子ではなく分身や一部に等しいのではないだろうか?
誰かがつっこむ?いやいや、相手は魔王陛下だ。迂闊なことを言えば首が跳ねるだろう。
すぐにそんなことはどうでもよくなる。
桜が咲く季節だっただろうか、魔王の腕に抱かれた小さな小さな女の子。
明るい声と、珍しく狼狽えながら抱っこをする王の姿。
次の日の魔王領新聞では「魔王様、お母さんになる」とでかでかと一面を飾ったことだろう。
生まれたお姫様の名前は、「ザラーシャ」だ。
魔王の側近は発狂し
妖精もすこぶるキレ
四天王があきれ顔で緊急招集され
門のガーゴイル
吸血鬼の送迎デュラハン
魔王城周辺に生息するヒグマルたち
はては遺跡周辺を守護するサソリの娘にまで
その騒ぎは一気に広まった。
もしかして足の速いハーフエルフのせいか?
あの魔王陛下が御結婚されるらしい!

「は?」
嘘である。
いや、嘘というよりも噂がねじ曲がり湾曲して広まったのだ。
魔王城には様々な種族が出入りし、城下町にはそれこそ生活がある。
魔王は考えていた、『自分に子供がいたら楽しいのだろうか』と。
放浪者、旅人、勇者、そして魔王………と随分長い時を歩んだ彼女の見た目は、細身の少女から変わることなく。美しく愛らしいまま。
歴史を聞くなら魔王様に教えを乞えばいい、と言われるほどには長くエゾデスに存在していた。
そんな、なんでも持っていそうな魔王様にないもの。
それが肉親だった。
ずっとともにいる者達はそれこそ家族同然と思っているが、本来の家族というモノを知らない彼女にとって『血のつながった存在』というのが気になった。
ヒグマル族にもきっと血のつながりはある。
鬼の一族にも親兄弟はある。
下々の者達にもきっと、当たり前にあるかもしれないそれが気になった。
だがそこからが問題だった。
何故か事が大きくなり求婚者が続出。貴族の魔族の謁見、増える花束。
そしてそれらを処理する側近と妖精、何故か求婚者たちの面接をさせられる四天王。城は混沌を極めていた。
結局誰も魔王の前に通されることはなかった。
魔王は言った。
「すいません、子供が欲しかっただけで夫は考えてないです。」
はよいえや。
魔王は子供がどうできるのかさえよくわかっていないのだ。故に夫のことは考えていなかった、周りの者達はホッとしたような、それはどうなんだ?というような顔をしたことだろう。
ならば子供をどうつくる?
皆知恵を振り絞った。振り絞ると言っても手段は限られている。
養子をとるか、魔法生命として生み出すかだ。
魔王は………後者をとった。
人間の女は腹を痛めて子を産む、というのは本を読んで知っていたのかそれを真似した。
具体的には腹ではないが、体の一部を使い、『子』を造った。
それは子ではなく分身や一部に等しいのではないだろうか?
誰かがつっこむ?いやいや、相手は魔王陛下だ。迂闊なことを言えば首が跳ねるだろう。
すぐにそんなことはどうでもよくなる。
桜が咲く季節だっただろうか、魔王の腕に抱かれた小さな小さな女の子。
明るい声と、珍しく狼狽えながら抱っこをする王の姿。
次の日の魔王領新聞では「魔王様、お母さんになる」とでかでかと一面を飾ったことだろう。
生まれたお姫様の名前は、「ザラーシャ」だ。