Eno.10 戦士の日記

昔話

――かつてエルフは不老不死だったらしい。

村の爺から聞いた話だ。

湖の民と呼ばれたあるエルフ族が今よりずっと神や精霊に近い存在であった頃。
永い時を美しいままに満ち足りて、誰もが幸せに生きていたが、いつしか死が訪れるようになり、一族の寿命は短くなっていった。
驕れる民への呪いか、人間への適応か、自然の摂理か。
死は、畏怖をもって"海に還る"と呼ばれた。

最後に残った不老不死のエルフは孤独だった。
家族を置いて、湖畔を出て、同じ不死の仲間を求めた。
死なずといえど厳しい寒さや自然の脅威は容赦なく襲いかかってくる。
長い旅の終わり、やがて訪れた最果ての地にて、死してなお生きる不死の魔族と出会った。
初めこそ両者には深い隔たりがあったが、次第にお互いを認め、共に喜びや孤独を分かち合うようになった。
こうして生涯の友と、新天地を求め遥かな航海に乗り出したとも、深い海へと還ったともいわれる。
その行方は誰も知らない。

……まあ、どうせ爺たちの作り話なんじゃないかね。
オチがハッキリしてないのが若干納得いかないが
俺はそんなに嫌いな話じゃない。
なんにせよ、寂しくはなかっただろうからな。