Eno.132 エルディス・エアリアルの日記

■:

「エアリアルブレイド!」
「アビススラッシュ!!」



 聖なる風と重撃なる水の一撃が、肥大した魔王を切り裂く。

 断末魔はなく、ただ空気がとどろく音が代わりとばかりに響いていた。



「……終わった、のか?」
 ぽつりと零した言葉に、エルディスは聖剣を鞘に納めて答えた。

……ああ!

 青空色の瞳が、へにゃりと細められた。
 戦いの余波で吹き飛んだ天井の穴から、光が差し始めた。立ち込めていた瘴気の雲が晴れていく。

 エルディスとディータは顔を見合わせ、笑った。お互いの傷だらけの姿が、なんだかおかしかったのだ。

「……さて!戻ろうぜ。待たせちまってるだろ?」
「そうだね。皆と、帰ろう!」


 決意と覚悟に満ちてくぐった魔王城門を、今は晴れやかな気持ちでくぐる。
 雪の積もる地、少し向こうに仲間の姿があった。

「あ!やっと来たわね、アンタたち!アタシ……アタシたち心配してたのよ?!」
「こっちですー!」
「ん」
 こっちだと叫ぶフィル、大きく手を振るネリス、ただ頷いて待つモルト。
 三者三様。しかし、二人が魔王に負けるなど誰も思っていなかった。信じて、魔物たちを捌いていたのだ。


 そんな様子に、二人は笑いながらふざけあう。




「ほら、勇者サマ?呼ばれてるぞ?」

「あはは……そうだね。行こう!おーーーい!」


 駆け出すエルディスを追うように、ディータが踏み出した、その瞬間だった。







「……は?」



 光の矢が、エルディスを貫いた。
 方角に顔を向ければ、そこには知る人影が立っていた。私は、その魔法も知っていた。


 聖なる矢。それを放ったのは大司祭様であり、その後ろには国王がいた。



「おい、エルディス、起きろ!!!」



 ……「勇者」エルディス・エアリアルは、その日、死にました。