Eno.937 吟遊詩人の日記

『災禍』

 
大きな 大きな竜を見た。

それはとても恐ろしくて、
一瞬のうちに多くのものが飲み込まれていく。


私は 彼にしがみついて目を瞑り、
ただ震えていることしか出来なかった。

私達の住処は 奇跡的に助かったけれど、
その日から何もかもが変わってしまった。
世界も 彼も。





「兄さん…、何が起こったの……?」

     ─ 彼は答えてくれなかった。


「これから…どうなるの?」

     ─ 彼は答えてくれなかった。




…きっと彼にも、わからなかったのだろう。
小さな島の中で、ただ眺めていただけの存在には。

だから、彼は知りに行った。
何が起こったのか、アレは何なのか。
これから世界がどうなるのかを。


私をただ一人、この小さな住処に残して。